「3単語近傍検索」で効率よく文献を見つけよう

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの角渕由英(弁理士・博士(理学)、特許検索競技大会2017最優秀賞)です。

今回は、効率よく所望の記載がある文献を検索することが可能な近傍検索の有効活用法について紹介します。

 

 

近傍検索とは?

「近傍検索」とは、複数(通常は、2つまたは3つ)のキーワードの間隔(文字間(日本語)や単語間(英語))を指定して検索をすることです。

近傍検索は、市販の特許検索データベースでは一般的に実装されている機能ですが、J-PlatPatでも利用可能となっています。

J-PlatPatにおける近傍検索について、マニュアル(付録、133~134頁)を参照して説明をします。

J-PlatPatにおける近傍演算子としては、語順指定の有無に応じて「C」と「N」の2種類があります。

 【語順指定あり「C」】 キーワードA,10C,キーワードB

 【語順指定なし「N」】 キーワードA,10N,キーワードB

なお、キーワードAとキーワードBの間隔は1~99文字まで指定できます。

近傍検索を用いると、所望の記載がある文献を検索することが可能となります。

例えば、食品分野の先行技術調査において、こんにゃく入りゼリーの弾性力に関する記載がある文献を探す際の例を以下に示します。

経済産業省の資料によれば、「弾力性」と「こんにゃく入りゼリー」とが10文字以内に近接して記載されている特許文献を、以下の検索式で検索しています(/TXは全文を指定する構造タグ)。

 弾力性,10N,こんにゃく入りゼリー/TX

 

3単語近傍検索の活用

以下、3単語近傍検索(15~16頁)した特許調査の例を紹介します。

近傍検索の活用場面としては、特許分類(FI、Fターム、IPC、CPC)が未整備である場合や、特許分類が有効に機能していない分野における検索を行う場合、テキストで特定の記載(発明の解決しようとする課題や、発明が奏する効果の記載)のある文献を探したい場合などが想定されます。

例えば、「A部材と、B部材と、が接続されている」という記載がある文献を探したいとします。

この場合に、想定される記載としては、以下のようなに様々なバリエーションがあり得ます。

 A部材とB部材が接続

 A部材とB部材が連結

 A部材とB部材が結合

 A部材とB部材とが接続

 A部材とB部材とが連結

 A部材とB部材とが結合

 A部材と、B部材と、が接続

 A部材と、B部材と、が連結

 A部材と、B部材と、が結合

 

 A部材、B部材、(連結+接続)のAND演算で掛け合わせた検索式として、

 A部材*B部材*(連結+接続+結合)

を作成した場合、文献のどこかに、これら3つのキーワードがあるものがヒットするため、一般的には、適切な文献を絞り込むことができません。

したがって、文章を想定して以下のような検索式を作成し、3単語近傍検索を行います。このような式であれば、3つのキーワードが互いに所定の文字数で近接して記載されている文献を適切に絞り込むことができます。

 例1:(A部材+部材A),10C,(B部材+部材B),10C,(連結+接続+結合)

例1では、「A部材」と「B部材」が10文字間隔以内で出現し、かつ、「B部材」と「(連結+接続+結合)」が、この語順で、10文字間隔以内で出現するような文献を探します。

 例2:{(A部材+部材A),(B部材+部材B),(連結+接続+結合)},20N

例2では、「A部材」、「B部材」、「(連結+接続+結合)」の3単語が語順に関係なく、各々20文字間隔以内で出現するような文献を探します。

以上のように、特許文献の記載を想定して近傍演算を行うことで、ピンポイントで所望の記載がある文献を抽出することが容易にできます。

J-PlatPatでは、国内・外国のテキスト検索機能が拡充されており(国内は昭和46年(1971年)以降、外国は1978年12月発行分~)、比較的古い文献においても近傍検索を行うことができるため、近傍検索を活用することで特許調査を効率的に行うことが可能です。

このとき、特許分類(FIやIPC)とキーワードを掛け合わせた検索と組み合わせることで、調査の効率をより一層向上させることもできます。

効率よく所望の記載がある文献を検索するために、3単語近傍検索を活用してみてはいかがでしょうか。

  

角渕 由英(弁理士・博士(理学))

専門分野:特許調査、特許権利化実務(化学/機械/ソフトウェア/ビジネスモデル)