田中 研二

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なぜ引用発明の上位概念化が進歩性の否定に繋がるのか?(3)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 前々回・前回に引き続き、「引用発明の上位概念化」について考えてみます。これまで、上位概念化を「捨象」と「抽象化」に分け、「抽象化」はさらに「構成の抽象化」と「発明の前提の抽象化」に分けて、以下のように類型化してきました。    今回の記事では、「発明の前提の抽象化」が進歩性の否定に繋がる理由を考察するとともに、前々回・前回の内容も踏まえて、引用発明の上位概念化と進歩性との関係をまとめてみようと思います。 ...
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なぜ引用発明の上位概念化が進歩性の否定に繋がるのか?(2)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 前回に引き続き、「引用発明の上位概念化」について考えてみます。前回は、上位概念化を「捨象」と「抽象化」に分け、上位概念化の対象が「主引用発明」か「副引用発明」かも考慮して、次のような4類型に分けてみました。    前回は「要素の捨象」について検討したので、今回は「要素の抽象化」について考えてみましょう。筆者の私見ですが、「要素の抽象化」は、発明の具体的な「構成」の抽象化と、「構成」の前にある発明の「前提」...
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なぜ引用発明の上位概念化が進歩性の否定に繋がるのか?(1)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 昨年末、「今月の進歩性」メンバーで知財実務オンラインに出演させていただきました。※「今月の進歩性」は、毎月集まって前月の進歩性関連の判決について議論する勉強会です。 番組では、進歩性に関するいくつかの論点について判決紹介とディスカッションをしたのですが、そのうち下井先生が発表された「引用発明の認定」セクション(09:00~)では、「引用発明の上位概念化」が話題になりました。 特に、一度ちゃんと整理したいと...
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進歩性主張のために複数の反論を組み合わせるべきか?

 こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。進歩性欠如の拒絶理由に対する反論には様々な種類があります。筆者は、大きく以下の5パターンに類型化して理解しています。 (1)審査官の事実認定が誤りである(2)相違点に係る構成を採用することが設計事項ではない(3)引用発明から本願発明に想到する動機づけがない(4)引用発明から本願発明に想到することに阻害要因がある(5)本願発明が予測不可能な有利な効果を奏する    筆者が以前発表した進歩性の反論事例の統計分...
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設計事項に対する反論の失敗パターン

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 前回の記事では、進歩性欠如の拒絶理由に対する2つの「効果」の主張パターンを紹介しました。 今回は、そのうち「設計事項」の指摘に反論する場合について、もう少し深掘りしてみましょう。 本記事では、筆者が以前発表した進歩性の反論事例の統計分析を元にして、「設計事項」の指摘に反論した場合によくある失敗パターンをご紹介します。  1.「設計事項」に関する統計上記論文では、進歩性欠如の拒絶理由に対して補正なしで反論し...
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進歩性に関する2種類の「効果の主張」

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。進歩性欠如の拒絶理由に対して、本願発明の「効果」を主張することがあります。この「効果」の主張は主に以下の2つの場面で行われますが、私はそれぞれの場面で「効果の主張の仕方」が大きく異なると考えています。●場面1:本願発明が「予測できない効果」を奏することを主張する●場面2:本願発明と引用発明との相違点が設計事項でないことを主張する この違い、意外と認識されてないことがあるようなので、表にまとめてみました。(「...
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「除くクレーム」の効果を主張すべきでない理由

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。先日、知財実務オンラインで「除くクレーム」についてお話しさせていただきました。(なお、後から見るとなんだか偉そうに喋っていますが、内容の99%は特許委員会の委員全員で調査検討した結果をまとめたものですので、私の寄与は私見部分などごく一部です。。) ライブ配信中で、「除くクレーム」の効果の主張についてご質問いただく場面があったので、今回は「除くクレーム」と「効果」との関係についてまとめてみようと思います。 お...
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「技術的意義」って何?

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 専門家チームの先生方に比べるとまだまだ未熟な身ですが、実務上の素朴な興味や疑問を調べてみたり、日々の実務から得たちょっとした学びを紹介したりしていきます。 少しでも皆様の参考になれば幸いです。  最初のテーマとして、特許実務でよく使われる「技術的意義」という概念を取り上げてみます。 この「技術的意義」という言葉、意外と多義的に使われており、特に実務初心者の方は混乱しがちなように思われます。というか実のとこ...