明細書の[背景技術]の欄に従来技術ではないことを書いてはいけない

こんにちは、知財実務情報Lab.管理人の高橋(弁理士・技術士)です。

 

明細書の[背景技術]の書き方を書く際の注意点の1つを説明したいと思います。

 

なお、私の書籍「化学系特許明細書・意見書の書き方」の第5章4.3にもだいたい同じことが記載されています。

 

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日本の審査基準(第Ⅱ部 第1章 第3節 2.1.4)及び米国のMPEP§2129では、明細書中に従来技術として記載されている技術は、その技術が公知であるか否かにかかわらず、出願人が自ら認めた従来技術として扱ってよい旨が示されています。

 

つまり、本来は従来技術ではなくても、[背景技術]の欄に記載されている技術は従来技術として扱われます。そして、[背景技術]の欄に何らかの事項を記載すれば従来技術(の集合)に対する本発明のレベルは相対的に低くなる可能性があり、その場合、本発明の進歩性が認められにくくなります。概念的に示せば、以下の図のようになります。

 

 

[背景技術]の欄には「先行技術文献に…と記載(明記)されているので、従来は…であったと推定される」のように、先行技術文献に明記されていることに基づいて「推定されること」を記載すべきではありません。その「推定する行為」が容易ではない可能性があり、容易でないならその推定は本発明の一部になり得るからです。

 

また、同様の理由で[背景技術]の欄に先行技術文献の要約を記載することも避けるべきです。

要約する際に上記のような「推定」が含まれてしまう可能性があるからです。

 

したがって、[背景技術]の欄には「推定」されることについては記載せず、確実に公知であることのみを記載することが原則です。

 

文献を挙げずに従来技術を例示することにもリスクがあります。発明者にとっては、社内において長年実施されてきた技術だから従来技術であるとの認識であっても、それは社外には漏れていないノウハウである可能性があります。そうであるならば、その技術は従来技術ではありません。

 

例えば出願の打合せにおいて、発明者が先行技術文献を挙げずに従来技術を示した場合、それが本当に公知であるかどうかを確認する必要があります。また、既に市場に出回っている製品であっても、その製品から容易に知ることができない技術であれば、それは従来技術として示さない方がよいでしょう。
 

公知であると確認できない事項や確認しにくい事項については、原則として従来技術ではないと考え、それについては[背景技術]の欄には記載しない方がよいです。

 
同様の考え方に基づき、発明者が本発明を見いだすために行った一連の実験結果のうち、従来技術をやや改善したものではあるが、本発明には至らなかった予備試験の結果のような態様についても、従来技術として挙げるべきではありません。

 
[背景技術]の欄に記載するのは、先行技術文献に明記されていることのみでよいと私は考えています。

 

外国語で記載されていたり、難解な技術論文であったりして、果たして本発明に近い発明が記載されているといえるのかどうかが判断しにくく、その文献を先行技術文献として[背景技術]の欄に記載すべきか悩む場合があるかもしれません。そのような場合、その文献は先行技術文献として[背景技術]の欄に記載しない方がよいです。それを[背景技術]の欄に記載すれば、従来技術であると自認することになるからです。

 

 

[背景技術]の欄に、「従来…という課題があった」のように、課題について言及されているケースを見掛けますが、それは本当に公知の課題でしょうか。

 
例えば「特許文献1には…と記載(明記)されており、また、特許文献1にはそれによって…という課題を解決できると記載(明記)されている」のように、先行技術文献に記載(明記)されている課題や効果をそのまま記載するのであれば、問題はありません。

 

しかし、本発明が新規な課題を有するのであれば、それだけで本発明の進歩性が認められる可能性が高いです。したがって、不用意に課題について[背景技術]の欄に記載してはいけません。課題を[背景技術]に記載すれば、「課題は新規ではない」と言っているに等しいからです。
 

課題が新規であるか否かを確認できない場合、課題は[背景技術]の欄に記載しない方がよいです。

 

※ 上記は、私の書籍「化学系特許明細書・意見書の書き方」の第5章4.3とだいたい同じです。