明細書の書き方の違い:化学系 vs 機械・電気系

こんにちは、知財実務情報Lab. 管理人の高橋政治(弁理士・技術士)です。

 

今回は、化学系明細書と、機械・電気系明細書との書き方の違いについて、イメージ図を示しつつ説明したいと思います。

 

  

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機械・電気系明細書の各々の書き方

機械・電気系明細書および化学系明細書の各々の書き方をイメージ図に示せば、次の図1および図2のようになると思います。

 

なお、図1および図2に示した発明(請求項1)はA+B+Cであるとしています。また、Aの下位概念はA1、A2、A3とし、さらにA1の下位概念をA11、A12、A13、A14としています。B、Cについても同様とします。

 

図1 機械・電気系明細書の書き方(イメージ図)

 

機械・電気系明細書の場合は、図1に示すように、主に縦方向(複数の発明特定事項を縦断する方向)に何通りかを説明し、補助的に横方向に説明する(特定の発明特定事項について詳細を説明する)というイメージです。

 

例えば椅子の発明について明細書を書くとします。

Aが座面、Bが脚、Cが背面とし、A1は円形座面、A2は四角形の座面、A3は楕円形の座面とし、A11は木製の円形座面、A12は金属製の円形座面、A13は樹脂製の円形座面、A14はガラス製の円形座面とします。

 

まず本発明がA、BおよびCからなる椅子の発明であることを述べた後、本発明に含まれる第1態様として、座面(A)として円形座面(A1)を有し、脚(B)として円柱状の脚(B2)を有し、背面(C)としてメッシュ状の背面(C3)を有する椅子について説明する。ここで円形座面(A1)として木製(A11)、金属製(A12)、樹脂製(A13)、ガラス製(A14)の円形座面であってよい旨を説明します。

 

同様に脚(B2)、背面(C3)の下位概念についても説明します。

 

そして、第1の態様について説明し終わったら、次に第2の態様として、A2、B1、C1からなる椅子について説明します。第1の態様の場合と同様に各々の下位概念についても説明します。第2の態様についての説明が終わったら、同様に第3の態様についても説明します。

 

このようにして機械・電気系明細書では発明全体を説明するイメージです。

 

なお、ここに挙げた例では縦方向に説明する際に中間概念(A2、B1、C1)を用いていますが、機械・電気系発明の説明においては下位概念(A11、A12、A13、A14)を用いて縦方向に説明する場合もあります。

 

化学系明細書の各々の書き方

これに対して後述する化学系発明の説明における実施例の発明では、通常、下位概念を用いて縦方向に説明します。

 

図2 化学系明細書の書き方(イメージ図)

 

化学系明細書の場合は、図2に示すように、[一般記載]では横方向に説明し、[実施例]において縦方向に説明するイメージです。

 

例えば接着剤の発明について明細書を書くとします。Aがエポキシ樹脂、Bがフェノール樹脂、Cがアミド樹脂であるとし、A1はビスフェノールA型エポキシ樹脂、A2はノボラック型エポキシ樹脂、A3は脂肪族エポキシ樹脂とします。

 

まず、本発明がA、BおよびCからなる接着剤の発明であることを述べた後、エポキシ樹脂(A)としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)、ノボラック型エポキシ樹脂(A2)、脂肪族エポキシ樹脂(A3)が挙げられることを説明します。

 

そして、さらにビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)としてはエポキシ基が1個のもの(A11)、2個のもの(A12)、3個のもの(A13)、4個のもの(A14)であってよいことを説明します。同様に、ノボラック型エポキシ樹脂(A2)の下位概念(A21、A22、A23、A24)、脂肪族エポキシ樹脂(A3)の下位概念(A31、A32、A33、A34)について説明します。

 

エポキシ樹脂(A)についての説明が終わったら、フェノール樹脂(B)およびアミド樹脂(C)についても同様に説明します。

 

そして、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)およびアミド樹脂(C)についての説明が終わったら、次に[実施例]を説明します。

 

[実施例]の欄では<実施例1>として具体的にどのように接着剤を製造したのか等を説明します。

例えばエポキシ樹脂(A)としてエポキシ基を1個有するビスフェノールA型エポキシ樹脂(A1)と、フェノール樹脂(B)としてアルケニルフェノール(B12)と、アミド樹脂(C)としてナイロン系ポリアミド(C12)とを含む接着剤について説明します。

その後、<実施例2>としてA14、B14、C13からなる接着剤、<実施例3>としてA22、B23、C23からなる接着剤、<実施例4>としてA31、B24、C23からなる接着剤、<実施例5>としてA33、B32、C32からなる接着剤、<実施例6>としてA33、B34、C34からなる接着剤について説明します。

 

このようにして化学系明細書では発明全体を説明するイメージです。

 

なお、実施例が具体例であるので最も下位の概念(A21、A22、A23、A24など)を用いて縦方向に説明します。これに対して機械・電気系発明において縦方向に説明する際には、最も下位の概念を用いることはあるものの、多くの場合、それよりもやや広い概念(中間概念など)を用いるように思います。

 

 

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