特許分類とキーワードを用いた本検索

 

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの角渕由英(弁理士・博士(理学)、特許検索競技大会2017最優秀賞)です。

 

これまでの連載で、特許調査において検索キーとして用いられる「特許分類」(前々回)と「キーワード」(前回)の調べ方について説明をしてきました。

 

今回は「特許分類」と「キーワード」を用いた本検索について述べたいと思います。

  

 

前々回前回で調べた特許分類とキーワードを用いて本検索を行います。

 

調査対象は、『CRISPR-Cas9システムvivo(生体内)で用いてゲノム編集』を行う技術です。

 

言い換えると、『ゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムvivo(生体内)で用いる』ものを調査対象とします。

 

まず、これまでに調べた特許分類(前々回)とキーワード(前回)を調べた構成毎に整理します。

 

 

 

技術Aについて、必須の構成B特徴Cである』ものを探すために、検索式は、技術A×構成B×特徴CとしてA AND B AND Cの集合を作成します。

 

J-PlatPatにおいて、検索項目として「FI」を指定して「C12N15/09,100」(CRISPR/Casを用いるゲノム編集技術、つまり技術A×構成B)を入力し、「請求の範囲」に「vivo インビボ 体内 生体中 生物内 生物中」(特徴C)と同義語をOR演算で入力してAND演算を行います。
 

そうすると、約400件がヒットし、キーワードのみを用いた予備検索よりも件数が約300件増加しました。

 

 

 

 

次に、さらに網羅的に検索を行うことを考えてみましょう。

特許分類は、分類付与の漏れ・ミスがある場合、適切な文献がヒットしない可能性があるため、特許分類に加えてキーワードも併用することが網羅性を向上させるために有効です。

 

CRISPR/Casを用いたゲノム編集技術に関する特許分類(FI)に、キーワード「CRISPR+クリスパ」を追加します。

 

また、特徴Cである「vivo+インビボ+体内+生体中+生物内+生物中」について、請求の範囲(/CL)だけではなく要約(/AB)も検索の対象に広げることで網羅性を向上させることができます。

 
このような複雑な検索を行うためには、論理式入力を利用することになります。

J-PlatPatの論理式入力のタブをクリックして、論理式のウインドウに、以下の論理式を入力します。

 

[C12N15/09,110/FI+CRISPR/CL+CRISPR/AB+クリスパ/CL+クリスパ/AB]*[(vivo/CL+インビボ/CL+体内/CL+生体中/CL+生物内/CL+生物中/CL)+(vivo/AB+インビボ/AB+体内/AB+生体中/AB+生物内/AB+生物中/AB)]

 

ここで、/FIはFIを検索項目として指定する構造タグであり、/CLは請求の範囲を指定する構造タグであり、/ABは要約を指定する構造タグとなります。

 

このようにして検索を実行すると、約500件となり、先程の特許分類(FI)であるC12N15/09,100のみを用いた検索よりも網羅的な検索となりました。

 

 

 

なお、J-PlatPatで指定できる検索項目は以下のとおりです。

 

 

  

論理式で指定する検索項目と検索漏れの多少、ノイズの多少の関係をまとめると以下のようになります。

 
発明の名称(/TI)→要約(/AB)→特許請求の範囲(/CL)→全文(/TX)の順で検索漏れが少なくなりますが、ノイズも増えてしまいます。

 

全文(/TX)→特許請求の範囲(/CL)→要約(/AB)→発明の名称(/TI)の順でノイズが少なくなりますが、検索漏れが生じやすくなってしまいます。

 
検索に用いる特許分類の広さや、キーワードの類義語・同義語のバリエーションに応じて、適切な検索項目を指定して検索を行うとよいでしょう。

 

次回は、検索式の組み立て方について説明をしますが、特許分類(FI)×キーワード(CL)、特許分類(FI)×キーワード(AB)キーワード(CL+AB)×キーワード(CL+AB)のように、特許分類とキーワードをAND演算で掛け合わせることで小集合を作成して足し合わせることで検索式を作成します。

 

 

 

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角渕 由英(弁理士・博士(理学))

専門分野:特許調査、特許権利化実務(化学/機械/ソフトウェア/ビジネスモデル)

  note

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