審査においてWEB情報が引用等される事例

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの角渕由英(弁理士・博士(理学)、特許検索競技大会2017最優秀賞)です。

 

近年、論文やホームページなどのWeb情報に留まることなく、YouTube等のSNS情報が審査官引用として挙げられるケースが増えていると実感されている方も多いと思います。

 

今回は審査においてWEB情報が引用等される事例について述べたいと思います。

 

 

 

審査において、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を含むWeb情報が引用等された技術について、調査を行いました。

 

具体的には、特許掲載公報を調査対象として、書誌事項の【参考文献】に、「http」が含まれているものを抽出しました(2022年4月24日時点)。

 

抽出した出願件数の推移を以下の図に示します。

 

出典:角渕由英、飛田保彦、「特許調査における先行技術資料および無効資料の変化」(知財管理、2022.9)

 

インターネットが普及し始めた1990年代後半から、2016年頃まで(審査請求期間と審査期間を考慮すると特許掲載公報が発行されていることが推定される時期)、Web情報が引用等される件数が年々増加していることがわかります。

 
抽出した文献の筆頭IPCについて、サブクラスレベルにおけるランキングを算出した結果を以下に示します。

 

サブクラスレベルでは、H04W(無線通信ネットワーク)、G06F(電気的デジタルデータ処理)、A63F(カードゲーム、盤上ゲーム、ルーレットゲーム;小遊技動体を用いる室内用ゲーム;ビデオゲーム;他に分類されないゲーム)、H04L(デジタル情報の伝送、例.電信通信)、A61K(医薬用、歯科用又は化粧用製剤)、C12N(微生物または酵素;その組成物;微生物の増殖、保存、維持;突然変異または遺伝子工学;培地)、H04N(画像通信、例.テレビジョン)、G06Q(管理目的、商用目的、金融目的、経営目的、監督目的または予測目的に特に適合したデータ処理システムまたは方法)、A23L(サブクラスA21DまたはA23B~A23Jまでに包含されない食品、食料品、または非アルコール性飲料;その調製または処理、例.加熱調理、栄養改善、物理的処理)、H04J(多重通信)の順となりました。

 

Web情報が引用されることが多い電気系(H04)やIT系(G06、A63)の分野では、通信系(H04W、H04L、H04J)、データ処理(G06F、G06Q)やゲーム(A63F)に関する技術が含まれており、生化学系(C12)ではバイオ系(C12N)の技術が大半であることがわかります。

 

Web情報として、どのようなSNSやWebサイトが引用されているかをチェックしたところ、大半は論文(電子ジャーナル)でしたが、いくつか目についたものを抜粋してカウントした結果を以下の表に示します。

 

 

Web情報を証拠として用いるためには、所定の日付における内容を保証する必要があります。

 

世界中のウェブ情報など、デジタル情報をアーカイブしている非営利法人であるインターネットアーカイブ(Internet Archive)が提供するWaybackMachine(https://archive.org/web/)は、インターネットアーカイブが保存するウェブサイトを閲覧できるサービスです。

 

 

WaybackMachineを利用すれば、ウェブページが保存された所定の時点での状態を閲覧することができます。

 
また、上図の赤枠で囲ったSave Page NowにURLを入力してSave Pageをクリックすることで、特定のページを収集させることも可能です。

 

下図は、知財実務情報Lab.®の2022/2/10時点のアーカイブです。

 

 

Wayback Machineに記録された情報の信頼性については、信頼できるとする裁判例や信頼できないとする裁判例がありましたが、近時の知財高裁の判決では証拠能力が認められています(例えば、平成30(行ケ)第10178号)。

 

具体的には、『ウェイバックマシンでコンテンツを検索した場合に表示されるURL「https://web.archive.org/web/20120414205607/…/」のうち、「…」の部分は収集した当該コンテンツのURLを示し、数字部分(上記検索の例では「20120414205607」)は、当該コンテンツが収集された日時(保存日時)を示すことが認められるから、上記甲号各証は、本件出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものに該当するものと認められる。』とされています。

 
参考①:知財判決その他、 特許取消決定取消訴訟 特許 平成30(行ケ)10178 知財高裁 取消決定 請求棄却
参考②:特許業務法人志賀国際特許事務所、東京ステーション法律事務所編、競争力を高める特許訴訟・審判の論点と留意点、278~285頁(2022)、 一般社団法人発明推進協会)

 

また、J-PlatPatを用いて審査においてWEBサイトが引用されている事例を調べることができます。

検索項目のタブで「書誌的事項」を選択して、キーワードの欄に引用されているWEBサイトの名称を入力します。 

以下の例では、「twitter」が引用された例を示しています。

 

 

 

このように、どのようなWEBサイトを引例として用いることが可能なのか、どのような記載のレベルであれば引例となり得るのかを知ることができます。

 

この検索手法を利用すれば、WEB情報ではありませんが、漫画が引用されている例も調べることができます。

参考:Uchida、特許庁の審査官はこち亀好き?-こち亀アイデア関連の特許出願紹介Vo.3-、Toreru Media

 

 

WEB情報や書物から必要な情報を的確に探し出すためには、欲しい情報が存在する可能性を知っていることや、欲しい情報の存在を想定できることが重要です。

 
つまり、ある程度、調査の対象となる技術分野においてリリースされている製品・サービスについて知識が必要であるので、普段から情報収集のアンテナを張っておき、情報に対する感度を高く保っておくことが大切と言えます。

 

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角渕 由英(弁理士・博士(理学))

専門分野:特許調査、特許権利化実務(化学/機械/ソフトウェア/ビジネスモデル)

  note

秋山国際特許商標事務所 https://www.tectra.jp/akiyama-patent/