これまでの知財業務の中でやっておいてよかったと思っていること

おはようございます。知財実務情報Lab. 専門家チームの森田 裕(大野総合法律事務所 パートナー弁理士、博士(医学))です。

 

非常に個人的な意見になりますが、やっておいてよかったことについて述べておきたいと思います。概ね以下の5つにまとめられます。

 

① 日本弁理士会の実務系委員会への参加
② 大学での知財顧問経験
③ 特許デューディリジェンス経験
④ 侵害訴訟・無効審判経験
⑤ 事務所での権利化業務経験

  

 

 

 

1.日本弁理士会の実務系委員会への参加

一つ目は、日本弁理士会の実務系委員会への参加です。

弁理士登録をしたその年に実務系委員会の1つであるバイオ・ライフサイエンス委員会に参加して、この委員会では、約10年間にわたって研究活動を行いました。

10年にわたってイノベーション創出を支えるために知財支援はどうあるべきかということに着目した調査・研究活動を行う機会を得ることができました。

同志と様々な観点から調査・研究をすることで、状況理解が促進されたり、お互い学びの多い貴重な機会をいただきました。

また、調査・研究の力を身につけることができて、去年設立した外国ベンチャー企業知財調査研究会の活動につながっています。

 

2.大学での知財顧問経験

二つ目は、大学での知財顧問経験です。

様々な事務所の仕事を見せてもらう側の立場で、事務所に対してどのようにお願いするとどうなるのかを理解するのに役立ちました。

出願時には、依頼者が自分で特許戦略を構築することの重要性や、依頼の仕方の重要性を痛感しました。

そのような現状から逆算して、事務所側では何をすることが本質的に重要なのかという点を理解することができたのも大きなメリットでした。

また、大学や研究機関で創出される発明は、必ずしも特許制度に馴染みませんので、私の場合は、打合せ前に発明の内容を理解しておき、ヒアリングの多くの時間は、発明を特許制度に馴染ませるために何をすればよいかを理解し、共有するために活用しているのですが、そのような現在の仕事のスタイルの確立につながったように思います。

常に新しい技術についての知識をアップデートし続けられることも大学での知財顧問のメリットです。

  

3.特許デューディリジェンス経験

三つ目は、特許デューディリジェンス(特許DD)経験です。

特許DDでは、同一分野の様々な特許文献に目を通すことになるのですが、非常に様々な工夫された特許を仕事の中で知ることができ、すなわち、仕事をしながら勉強ができるので、実務力向上に寄与したように思います。

感心する特許にもたくさん触れることができました。

どのような特許が他社を困惑させるのか、どのような特許はリスクを感じさせないのかを実感させられることが多かったように思います。

この経験は自身が権利化戦略の立案において生かされます。

また、特許DDは、ビジネス上の重要な判断を行うときになされるものですので、ビジネスにおける特許の役割を考えるよい機会を得たようにも思います。

 

4.侵害訴訟・無効審判経験

四つ目は、侵害訴訟・無効審判の業務経験です。

自分はそうだったのですが、大きな事務所では仕事は細分化されてしまい、権利の活用に携わる経験を積むことができませんでした。

しかし、特許は、活用にその本質があり、活用に相応しいと考えられるものを作り出すことは重要ですので、活用場面を経験し、理解することは大事であると改めて感じさせられています。

活用場面で何が生じるのかを知ることで、権利化業務をその場面で適するものに変えなければならないことを実感しました。

基本的に特許権の権利行使の成功率は必ずしも高くないので、権利行使の難易度を下げるために悪戦苦闘することの必要性を学んだように思います。

 

5.事務所での権利化業務経験

五つ目は、事務所での権利化業務経験です。

一つ目から四つ目の経験は、権利化業務において有効にシナジーを生じ、業務を一段階も二段階も押し上げてくれているように感じています。

具体的には、イノベーションの知財支援で重要なことを徹底的に追求し、他社を牽制する特許の出願と権利化を追求し、訴訟や無効審判に耐える権利化を追求し、そのために必要があれば、調査・研究で足りない部分に対する有効な戦略を構築して、実践に持ち込んでいます。

これらは単に業務の質を向上させるというだけではなく、権利化業務において自分らしい自分なりの社会貢献の途を拓くのに役立っているという意味でかけがえのないものです。

現在は、スタートアップ支援に力を入れていますが、上記の全てがスタートアップ支援に集約され、特徴的な支援を可能としているようにも思えます。

 

 

以上、やっておいてよかった5つの業務でした。

 

上記では、自分の経験から5つを挙げましたが、これらによらず能力を向上させる機会は様々なところにあると思います。熱意を持ってやり遂げるなら、どのような仕事経験でも将来につながると思いますから、平均的な人がやっていない業務の組合せで自分を特徴付け、その特徴を欲する人からとても強く求められる形を作ることはお勧めです。

 

自分なりの特徴的側面を求めてくれる人を中心に支援することで十分に大きな社会貢献ができて、十分に幸せな人生を送れるように思います。この方向性に入ると、自分でなくてはできない(と思える)仕事に自分の多くの時間を費やすことになり、必然的に自分の特徴的部分をフル活用した支援ができるようになり、人生が期せずして充実することになります。但し、自分作りにはとても長い時間が必要です。5年~10年計画で、自分なりの特徴作りをしてみるのはよいかも知れません。

  

森田 裕 (大野総合法律事務所 パートナー弁理士、博士(医学))

専門分野:医薬、バイオ、化学系特許の権利化、訴訟、ベンチャー支援、知財コンサルなど

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大野総合法律事務所:https://www.oslaw.org/