知財コンサルティングは稼げるのか?

 

おはようございます。知財実務情報Lab. 専門家チームの森田 裕(大野総合法律事務所 パートナー弁理士、博士(医学))です。

 

知財コンサルティングは稼げるのかという問題について簡単に意見を述べておきたいと思います。

 

結論から述べると稼げると思いますし、クライアントの事業への貢献が大きいほど稼げるので、次元がかなり違ってくるのではないかと思われます。

 

出願をしないとなぜか宣言して、有料で知財コンサルティングをしていたことがあるので、意見を述べる資格はあるのではないかと思っています。しかし、コンサルティングの結果、どうしても出願もお願いしたいとなるので、結局出願を受けることになり、その宣言は意味が無い浅はかな宣言であったと理解して、出願しないと宣言するのは止めています。

 

 

 

時間単価による計算

まず、皆さんが1日8時間で週休2日で52週働くと、約2000時間の労働時間を確保することができます。この全ての時間をチャージすることができるとすると、時間単価×2000時間が売上になるでしょう。

 

弁理士の時間単価は、概ね2万円~3万円前後と思われますので、売上は4000万円から6000万円となります。1/3の取り分とすると、1300万円~2000万円が年収となります。したがって、年間2000時間をフルに活用できると、そこそこ稼げるという結論になりそうです。

 

また、年3000時間の労働時間を確保したとすると、売上は6000万円から9000万円になります。そうすると、年収は、2000万円から3000万円となります。勤務弁理士の場合には、労働時間の制限がありますので、合法的な範囲では稼げる額に自ずと限界が生じてしまいますが、個人事業主としてやっていらっしゃる弁理士なら十分に可能なレベルです。したがって、それなりに稼げる余地があるように思えます。

 

しかし、経験上は、時間単価通りに稼げている弁理士はそう多く無さそうです。これは、時間消費と報酬とが合わない仕事を多く受けているからであると疑われ、特に国内の出願業務がそのような仕事に当たるように思われます。高単価の出願はそもそも多くないので、件数で稼ごうとすれば必然的に大量の低単価案件をさばく必要性を生じさせるためです。

 

しかし、知財コンサルティングを出願と切り離してもなお有料サービスとして展開することができるなら、世界は一変するように思われます。上述のように、簡単な計算から理解できるように、単純に時間効率が高いからです。

  

資金を投じたい戦略があれば・・・

しかし、本質は、上記の単純な意味での時間効率の問題だけではないのではないかと思われます。すなわち、知財コンサルティングにより、資金を投じれば、投じた以上の効果が期待できることが明確に理解できる戦略を仮に与えることができたとしましょう。投じた金額の何倍もの効果が得られるとすれば、できるだけ多くの金額を投じようとするのが合理的判断といえます。つまり、考えて考えて考えて、考え続けて、その結果、資金を投じれば、投じた以上の効果が期待できることが明確に理解できる戦略を仮に与えることができたとすれば、それを実行するために大きな予算を投じてもらうことは可能であると理解されます。

 

例えば、知財コンサルティングを受けることで、研究開発が有効に進み、かつ特許戦略も充実したものになるのであれば、それができないような安いところでお願いする方がよいという発想には通常はならないものと思います。簡単な例では、取得するべき実施例を最小限にしつつ、最大の権利を取得できる提案ができたとして、研究開発費の削減効果は大きく(場合によっては数百万円から数億円)、したがって、その点だけを踏まえても十分にペイするビジネスを構築できるはずです。

  

それだけではなく、新参者が勝つための戦略の付与、その分野で一気にトップランナーに踊り出るための戦略の付与など、プライスレスなものがたくさんあるように思われます。このような戦略を単に付与しているだけでも、相当の金銭的価値をもたらすことができるはずであり、それをサポートできる弁理士は貴重であるように思われます。

 

クライアントの今までにない喜びと爆発的な収益力の世界へ

さらには、そのようなことができる弁理士には、重要な仕事(高単価が許される)の舞い込んでくる割合も増えて来るものと思われます。あるいは、戦略を付与してく過程で、費用をかけて最高のものにしたいという要望が生じてくることも少なくありません。そのようなことで、重要案件を自ら生み出し、あるいは重要案件が集まってくるようになることが期待できるようになりそうです。さらには、重要案件は、外国でも権利化をする理由にもなるため、外国出願比率が増加して、1つの出願でいくつもお仕事をいただくといった状況に自然になるものと思われます。

 

したがって、単純な時間単価の計算だけでは語れないような爆発的な収益力をもたらすのが、本来的な知財コンサルティングであると思われます。そして、高く提供できる知財コンサルティングほど、爆発的な収益性をもたらし得ることが理解できるような気がします。そして、クライアントにものすごく大きな価値をもたらして弁理士も儲かるという相互の交換関係であるので、儲かっているときほどクライアントの喜びが大きいという現象が生じるのが、知財コンサルティングの醍醐味であるように思われます。

 

知財コンサルティングはブルーオーシャン!?

このように、有料で自信をもって提供できる知財コンサルティングは、クライアントを幸せにすることができ、かつ、自らの収益性を根本的に改善するようでもあり、この分野には夢があるように思えてしまいます。しかし、知財コンサルティングはまだまだブルーオーシャンであり、金銭的価値を提供できている弁理士はまだ多くないように感じられます。やり方が分かってしまったらその種類の仕事ではもう価値がなくなり、稼げなくなりますから、やり方が広く理解されていないうちに参入して、自分で道を切り開き、自分ならではの方法論で、クライアントに莫大な事業的価値・金銭的価値をもたらすことができるようになるならば、専門家としての充実した人生を過ごせるかも知れません。

 

具体的にどのようにすればよいのかは、模索してみて下さい。上手く稼働している専門家を模倣するのが一番の近道ですので、近くにそのような方がいらっしゃれば学ぶのがよいように思われます。

  

森田 裕 (大野総合法律事務所 パートナー弁理士、博士(医学))

専門分野:医薬、バイオ、化学系特許の権利化、訴訟、ベンチャー支援、知財コンサルなど

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大野総合法律事務所:https://www.oslaw.org/