欧州で知財の仕事に就く方法

 

こんにちは、知財実務情報Lab. 専門家チーム、Hasegawa弁理士事務所代表の長谷川です。

今回は欧州における知財キャリアに関するお話を取り扱います。より具体的には欧州における知財キャリアのはじめの一歩となる欧州での勤務先の見つけ方について解説しいたいと思います。

私自身、欧州で働きたいという日本の知財関係者の方々から相談をいただくことが多いので、欧州での勤務を希望されている日本の知財関係者は一定数いらっしゃるのだと思います。

しかし日本人にとって欧州での勤務先を確保するのは決して簡単ではありません。そもそも日本では知財分野に限らず一般的に欧州での就職、転職に関する情報にアクセスしずらいので無理はありません。

そこで今回の記事では現在欧州で働いている日本人の知財関係者がどのようにして勤務先を見つけたかを紹介します。日本人の知財関係者が欧州で勤務先を見つけるパターンには主に以下の4通りがあります。

   

1.日本企業からの派遣

欧州での知財活動が活発な日本企業のいくつかは定期的に取引のある現地の事務所に駐在員を派遣しています。日本企業からの駐在員の場合は駐在期間の終了後に日本に帰国することが前提となりますが、欧州の事務所に滞在している間に実務経験を積み欧州特許弁理士資格を取得される方もいます。

さらには駐在期間終了後に日本に帰国した後に暫くしてから欧州に戻り事務所または企業に就職される方もいます。

このため日本企業からの欧州への派遣は欧州で知財キャリアを築く上での最初のステップになり得ます。したがって自分が所属している企業に欧州での研修制度があれば活用するのも選択肢の一つです。

 

2.MIPLC留学

ドイツのミュンヘンにはミュンヘン知財法センター(Munich Intellectual Property Law Center, MIPLC)と呼ばれる知的財産法および競争法を専門とする研究教育機関があり、日本を含む世界各国からの留学生を受け入れています。

日本からこのMIPLCに留学し、留学中にインターンなどを通して現地の事務所または企業とのコネクションを構築し、そして留学カリキュラムの修了後に欧州の事務所または企業に就職される方もいます。

ただしMIPLCのカリキュラムはかなりハードと聞きます。このため欧州での就職のみが目的の場合はあえてMIPLC留学を経由する必要は無いのかもしれません。

 

3.求人応報

現在欧州で働いている日本の知財関係者が欧州で勤務先を見つけたパターンとして最も多いのが、事務所の求人に応募したパターンだと思います。欧州の事務所は日本人専用の求人を出すことがあるのでそれに応募すれば高い確率で欧州で勤務先を得ることができます。

しかし近年では欧州の事務所による日本人専用の求人情報が公開されることはかなり稀になりました。ひと昔前はパテントサロンなどでもでも欧州の特許事務所の求人情報を定期的に見かけましたが、最近ではほとんど見みません。

したがってこのパターンで欧州で勤務先を見つけることは今となっては難しいかもしれません。

 

4.自ら積極的な売り込み

求人は出していないけれども自分が働いてみたい組織にコンタクトを取って雇ってもらうというパターンです。私自身はこのパターンでドイツで就職先を見つけました。

例えば私の場合、就職先をドイツに決めていたので、日本企業を多くクライアントとして抱えるドイツの特許事務所に片っ端から履歴書を同封してコンタクトをとってみました。

コンタクトを取った事務所の8割からは無視または体よくあしらわれましたが、2割の事務所からは興味を示してもらえました。

当時これらの事務所が日本人向けの求人広告を出していなかったことを考慮すると、2割という数字はかなり良い確率だと思います。

または、現在勤めている日本の事務所または会社によく訪問してくる欧州代理人に内密に「貴所で働かせてくれないか」とダイレクトに聞いてみるのもよいかもしれません。

日本によく出張する欧州代理人は日本企業を多くクライアントとして抱えているはずなので、日本人知財関係者の潜在的需要もあるはずです。

 

まとめ

上述のように現在の欧州ではこれまで王道であった欧州の事務所の日本人専用の求人に応募することで勤務先を確保するパターンは難しくなってきてます。さらに日本企業からの駐在員としての派遣またはMIPLC留学を経由する選択肢は限られた人にしか開かれていません。

そうすると今後、欧州で勤務先を確保するには「4.自ら積極的な売り込み」を視野に入れる必要ことが必要になります。

いずれにせよ待ちのスタンスだけでは今の欧州で希望に適った職場を見つけるのは困難です。攻めのスタンスで行動できるか否かが希望の勤務先を得られるか否かの分かれ道になると思います。

 

長谷川 寛 (日本弁理士、欧州特許弁理士、ドイツ弁理士、Hasegawa弁理士事務所 代表)

専門分野:欧州特許(バイオ、化学、機械)

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