顧問契約のすすめ

こんにちは、知財実務情報Lab. 専門家チームの田村良介(弁理士、ライトハウス国際特許事務所)です。

本日は、弁理士との顧問契約について、お話をしたいと思います。

 

顧問契約というと、弁理士にいつでも相談することができる、というタイプの契約であることが多いように思いますが、私がお勧めをするのは、定期的な会議・打ち合わせをすることを前提とした顧問契約です。特に、中小企業、スタートアップ企業には、お勧めの契約です。

 

このタイプの顧問契約をお勧めする理由についてご説明します。

 

例えば、弁理士と企業が、毎月1回、定期的に、会議・打ち合わせをします。この打ち合わせは、発明ヒアリングや中間対応の方針決定に関するものではありません。発明ヒアリングや中間対応に関する打ち合わせは、別途、行います。この打ち合わせでは、企業から、現状の説明、課題、将来的な方向性など、技術に関すること以外についても、お話をお伺いし、情報を整理していきます。

 

こうすることで、弁理士のクライアントに関する情報量は、飛躍的に増えます。

 

この企業の強みは何か、マーケティング戦略はどういうものか、どのような技術開発を行っているかなども、情報として必然的に入ってきます。こういった情報を十分に把握できるからこそ、弁理士からの提案も磨かれていきます。

 

例えば、その企業が何を強みにしていて、その強みを活かして、どのような社会課題を解決しようとしているのかを、弁理士が把握していれば、その企業が生み出した多数の発明から、どの発明を優先して出願し、権利化していくべきかを検討し、提案をすることができます。

 

また、弁理士が、その企業において、どのような技術の開発が行われているかを把握していることは、権利化の側面からも重要です。

 

通常、企業の開発部門が、新製品を開発し、何等かの発明をすると、特許事務所に連絡をし、特許出願の依頼をします。特許事務所の弁理士は、発明のヒアリングを実施し、出願書類を作成していきます。ただ、このような進め方の場合、1つの問題が生じます。

 

それは、発明者が、特許を取得したい、又は、特許を取得できそうと認識したもの以外は、出願の対象から漏れてしまうこと。

 

出願をしていれば、特許を取得できたはずの発明が、出願されることなく公開されてしまいます。開発の初期段階で生まれる発明の権利化は、競合他社に対する優位性を築くのに欠かせないものですが、そういった発明が出願されずに、放置されてしまうことがあります。

 

発明者は、日ごろから、自らの技術と向き合い、試行錯誤を繰り返しています。そうすると、シンプルだけど独創性のある基本的な発明を、重要な発明として認識できない、ということがあります。発明の効果も、極めて大きなものと言えるようなものではありませんので、進歩性は有さず、特許にならないだろう、と思い込みで判断をしてしまうわけですね。

 

このようにして、出願をする前に発明が公開され、弁理士が気づいた時には、手が打てない状態になっています。弁理士と定期的な打ち合わせをし、開発の状況についてヒアリングすることができれば、このようなことも防げます。

 

発明が完成する前の段階から、弁理士が関与していることには、他にもメリットがあります。弁理士から、どのような方向で開発し、特許を取得することで、自社に有利なポートフォリオを築くことができるのかのアドバイスを得ることもできるでしょう。開発品をどのように改良するかについてのヒントが得られる場合もあるでしょう。また、弁理士が、開発の状況を把握していることで、適切なタイミングで、侵害予防調査を実施することもできます。

 

社内に知財部のある企業では、知財部員の方がこのような役割を担われています。ですが、社内に知財部のない中小企業・スタートアップ企業の場合は、社外の弁理士が知財部員に代わってこのような役割を担うことができるのではないでしょうか。

 

いかがでしたでしょうか。

 

社内に知財部のない中小企業・スタートアップ企業の皆様には、是非、弁理士との顧問契約をご検討いただきたいですし、特許事務所の弁理士の皆様には、クライアントに対して顧問契約による支援をご提案いただければと思います。

 

田村 良介(弁理士、ライトハウス国際特許事務所)

専門分野:特許の権利化実務(主に、化学、ソフトウェア)

  note

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