田中 研二

田中 研二

冬休みにじっくり読みたい特許本

 こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 今年の冬休みはなんと9連休だそうです。仕事から解放されてのびのびと過ごしたり、久々に帰省したり、家族サービスに勤しんだりと様々に過ごされることと思いますが、日頃なかなかまとまった時間が取れない実務家の皆様にとっては、集中して勉強する良い機会でもあります。そこで、今回は「腰を据えて読みたい特許本」を紹介してみようと思います。勉強好きな特許実務家の皆様は、ぜひ休み期間しかできない贅沢な勉強をしてみませんか?...
田中 研二

なぜ「課題の共通性」が動機付けになるのか?

 こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 審査基準では、「動機付け」は専ら「当業者が主引用発明に副引用発明を適用しようとする動機付け」と整理されており、動機付けとなり得る観点として以下の四つが挙げられています。技術分野の関連性課題の共通性作用、機能の共通性引用発明の内容中の示唆このうち、審査実務上も裁判例上も圧倒的に争点になりやすいのが「課題の共通性」です。 本記事では、なぜ「課題の共通性」が動機付けになるのか、という視点で「動機付け」という概...
田中 研二

『論文勉強会』のススメ

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 皆様は、実務家として日々新たな知見やスキルを求めていることと思います。 もちろん実務をこなすと経験は蓄積されていきますが、一人で得られる経験にも限界はあるもの。日々の実務では得られにくい知識やノウハウを学ぶ場として、事務所内や会社内で『論文勉強会』を開催するのはいかがでしょうか?    論文勉強会とは勉強会に決まった形式はありませんが、たとえば週一で曜日を決めて1時間程度、有志で集まって、気になる論文の読...
田中 研二

除くクレームとする補正の考え方(2)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 前回は、「除くクレーム」に関する典型的な論点(「除くクレーム」の導入目的と除く対象は限定されるのか)について考えてみました。 今回は、より一般的に、「除くクレーム」を導入する補正・訂正における新規事項判断について考えてみましょう。 ※なお、私は新規事項の判断基準は補正でも訂正でも基本的に共通すると考えているので、以下では補正・訂正を厳密に区別しないことがあります。  大前提はソルダーレジスト大合議判決の規...
田中 研二

「除くクレーム」とする補正の考え方(1)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 今回は、「除くクレーム」に関して、よくある以下の二つの疑問について考えてみます。 (1)新規性・29条の2・39条の拒絶理由を解消する目的でないと使えないのか?(2)本願発明と引用発明との「重なりのみ」を除かないといけないのか? この二つの疑問は、どちらも審査基準の以下の記載(引用部分の下線は筆者が付加。以下同じ)に端を発するものと思われます(審査基準第IV部第2章3.3.1(4))。  補正前の請求項に...
田中 研二

ChatGPTでクレーム作成の練習をしよう!

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 突然ですが、私は素早いクレームドラフティングが得意ではありません。 発明ヒアリングをしながらサラッとクレームを書けるとカッコいいなあと思いつつも、恥ずかしながら、未だにその場でのクレーム作成にはもたつきますし、それよりも事前に提案書を読みながら時間を使ってクレームを用意するスタイルのほうが好きだったりします。 とはいえ、ヒアリングの場で次々に新しい情報が出てきたりすると、やはりその場で素早くクレームを作る...
田中 研二

阻害要因を導入する補正とは

 こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 今回は「阻害要因を導入する補正」という進歩性のテクニックをご紹介します。 ある程度経験を積まれた方にはお馴染みの手法かもしれませんが、意外と言語化されていない気がするので、まとめてみました。    1.「どんな補正がよさそうか」の判断基準拒絶理由通知で新規性欠如や進歩性欠如が指摘された場合、出願人が取り得る選択肢は、 (1)補正せずに反論する(2)補正をするの二択です。 しかし、「補正をする」といっても...
田中 研二

引用発明の認定の誤りをパターン化してみた

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。「引用発明の認定」は、進歩性対応の実務における頻出マターです。 引用発明の認定を覆すことができれば、進歩性判断の前提が引っくり返るので、拒絶理由の解消にとても有効です。そこで今回は、引用発明の認定に誤りがあると主張できる典型的なパターンを整理してみます。 以下の5パターンは、筆者が過去分析した進歩性の反論事例から抽出したものです。もちろん実際にはこれ以外にもありますが、頻出パターンは押さえているかなと思いま...
田中 研二

なぜ引用発明の上位概念化が進歩性の否定に繋がるのか?(3)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 前々回・前回に引き続き、「引用発明の上位概念化」について考えてみます。これまで、上位概念化を「捨象」と「抽象化」に分け、「抽象化」はさらに「構成の抽象化」と「発明の前提の抽象化」に分けて、以下のように類型化してきました。    今回の記事では、「発明の前提の抽象化」が進歩性の否定に繋がる理由を考察するとともに、前々回・前回の内容も踏まえて、引用発明の上位概念化と進歩性との関係をまとめてみようと思います。 ...
田中 研二

なぜ引用発明の上位概念化が進歩性の否定に繋がるのか?(2)

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チームの田中研二(弁理士)です。 前回に引き続き、「引用発明の上位概念化」について考えてみます。前回は、上位概念化を「捨象」と「抽象化」に分け、上位概念化の対象が「主引用発明」か「副引用発明」かも考慮して、次のような4類型に分けてみました。    前回は「要素の捨象」について検討したので、今回は「要素の抽象化」について考えてみましょう。筆者の私見ですが、「要素の抽象化」は、発明の具体的な「構成」の抽象化と、「構成」の前にある発明の「前提」...