
こんにちは、知財実務情報Lab. 専門家チームの竹内 茂樹 (カリフォルニア州弁護士・パテントエージェント・弁理士、Kim and Stewart LLP)です。
許可通知 (Notice of Allowance) を受け取った後、特許発行手数料支払い前に、クレームの瑕疵に気が付いた場合、どのように対応すべきでしょうか。
このようなケースでは、規則312補正(37 CFR 1.312に基づく補正)を提出することにより、クレームの補正が可能です。但し、その補正が受け入れられるかは、ファイナルOAの場合と同様、審査官の裁量となります。特にクレームのスコープに影響する補正については、許可通知の時点で審査は完結しているという建前のため、より慎重に取り扱われる点に留意が必要です。
§1.312 許可後の補正
許可通知の郵送後は,出願に関する補正は,権利事項 (a matter of right) としては行うことができない。本条により提出される補正書は,発行手数料の納付前又は納付と同時に提出されなければならず,また,その補正は,主任審査官の勧告に基づき,長官の承認を得て,その出願を特許発行から取り下げることなく,記録することができる。
条文上は「長官の承認」とありますが、この承認権限は実務上SPE (Supervisory Patent Examiner) に委譲されています。誤記の訂正などの形式的事項のみの補正や、クレームのキャンセルであれば、主任審査官 (primary examiner) の判断のみで記録され得ます (MPEP 714.16(d))。
また、提出のタイミングとして、「(発行手数料の)納付と同時」とありますが、補正が受け入れられなかった場合のさらなる対応(RCEや継続出願など)の可能性を考慮すると、納付期限前に十分余裕をもって対応すべきです。なお、312補正が受け入れられなくても特許発行の手続自体は止まらず、許可済みのクレームのまま特許が発行されます。
もう一つの留意点として、許可通知後に出願人が自発的に312補正などの書類を提出すると、特許期間調整 (PTA) が減算されます (37 CFR 1.704(c)(10))。減算日数は、許可通知に記載された日付 (Mail Date / Notification Date) の翌日から当該書類の提出日までの日数となります。
このような312補正の内容ですが、クレームのスコープに影響のない誤記の訂正や文言の明確化であれば、受け入れられる可能性は高いです。具体例を以下に列挙します。
- クレーム
・明らかな誤記や誤植の修正
・先行詞欠如の問題の修正(初出の “the/前記”)
・キャンセル - 明細書・図面
・明らかな誤記や誤植の修正
・参照番号の修正(新規事項の導入はNG) - 発明の名称や要約文の修正
普段から補正の程度に気を付けているためでもありますが、経験上、このような形式的補正が受け入れられなかったケースはほとんどありません。
では、スコープに影響するような補正を行いたい場合にはどうすべきでしょうか。
まず、一般論として、そのような補正は認められない可能性が高い点を理解しておく必要があります。クレームスコープを変える場合には、312補正ではなく、発行手数料納付前のRCE、又は継続出願が正しい手続き上の選択肢となります。継続出願であれば、親出願を予定どおり発行させつつ、子出願で異なるスコープのクレームを追求できます。
通常、受け入れられない補正の例を以下に列挙します。
- 追加のサーチや審査を必要とするクレーム補正またはクレームの追加
- クレーム範囲の拡張
- 新規事項 (New matter) の追加
- クレームの大幅な書き直し
- 新たな争点 (New issue) の提起
MPEP 714.16は、補正を受け入れない理由として、(a) 追加サーチが必要な場合、(b) 記録の簡単な確認 (cursory review) を超える検討が必要な場合、(c) 庁側に相当の追加作業が生じる場合、のいずれか一つで足りるとしています。
一方、開示内容若しくはクレームのスコープに影響する補正、又はクレームを追加する補正については、以下の内容の陳述を十分かつ明確な根拠とともに示すことが必須とされており、審査官がこれを受け入れれば、補正が受け入れられる可能性はあります。
(A) なぜ補正が必要であるか
(B) なぜクレームの補正案又は新たなクレームが追加で調査又は審査を必要としないか
(C) なぜクレームが許可可能か
(D) なぜその補正をより早期に提出しなかったのか
いずれにしても、審査官の裁量的側面が大きいため、可能であれば、事前に審査官に電話連絡して事情を説明し、補正が受け入れられるか確認することをお勧めいたします。
最後に、発行手数料の納付後は、原則として312補正は記録されません。納付後に瑕疵に気付いた場合は、規則1.313(c)に基づく発行取下げの申請とRCEの提出を検討するか、特許発行を待って、軽微な誤記であれば訂正証明書 (Certificate of Correction)、実体的な訂正であれば再発行 (reissue) により対応することになります。





