引用文献に示されている簡略化された図に基づいて本願発明の新規性・進歩性が否定された場合の反論方法

こんにちは、知財実務情報Lab.管理人の高橋(弁理士・技術士)です。

 

拒絶理由通知書では、審査官が引用文献の図面に基づいて、本願の新規性・進歩性を否定してくることがあります。

 

しかし、引用文献の図は多くの場合、簡略化されて描かれています。そして、その簡略化された図は引用文献に記載された発明を表していないことがあります。

 

このような場合、本願発明が新規性、進歩性を有することを主張して、拒絶理由を覆すことができる場合があります。

 

今回はそのような主張を行うためのポイント、ロジックの例を説明したいと思います。

 

 

1.図は多くの場合、簡略化されている

例えば、積層体の断面図で、複数の層が隙間なく接するように描かれていることがあります。

この図だけを見ると、層同士が接着剤などを介さずに直接接触しているようにも見えます。

 

 

しかし、層が剥離しないように固定するのであれば、実際には層間に接着剤層が存在すると考えるのが自然です。単に図を分かりやすくするために、接着剤層の記載が省略されているだけと考えられます。

 

ここで本願発明が、「層間が接着剤を用いること無しに付けられている積層体」であったとしましょう。

 

この場合、上記の引用文献に基づいて、本願発明の新規性が否定されたとしても、反論できる場合があります。

 

  

2.「引用発明」は当業者の理解を通して認定される

特許・実用新案審査基準、第III部 第2章 第3節 3.1.1(1)に記載の通り、新規性・進歩性判断において、「刊行物に記載された発明」は、「刊行物に記載されている事項」および「刊行物に記載されているに等しい事項」から把握します。

 

ここで「刊行物に記載されているに等しい事項」は、刊行物に記載されている事項から本願の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が導き出せる事項をいいます。

 

そして、審査官は、刊行物に記載されている事項および記載されているに等しい事項から当業者が把握することができない発明を「引用発明」とすることはできません。
 

つまり、当業者が刊行物の記載からどのように把握するかを常に考慮して「引用発明」を認定する必要があります。

 

したがって引用文献に記載の図についても、当業者がその図に基づいてどのように発明を把握するかを考慮しなければなりません。

 

上記の例で言えば、図に接着剤層が示されていなくても、当業者であれば接着剤層が存在していると認識するのであれば、接着剤層が存在している積層体が「刊行物に記載された発明」です。

 

「図に接着剤層が示されていないから、この積層体は接着剤を介さずに層が積層されている」と認定することは、当業者の理解とは異なる可能性があるわけです。

 

3.反論方法

このような場合の反論は、次のように組み立てるとよいでしょう。

  1. 審査官が図面のどの部分を本願発明のどの構成要件に対応させたかを確認する。
  2. 前述の審査基準の原則(第III部 第2章 第3節 3.1.1(1))を示す。
  3. 「図には示されていないが、当業者であれば〇〇が存在すると理解する」ことを説明する。
  4. その結果、当業者であれば引用文献から審査官が認定したような発明を認識しない、したがって本願発明の新規性は当該引用文献に基づいて否定されない、と結論づける。

 

 

4.まとめ

引用文献の図は簡略化されていることが多いです。図に描かれていないことをもって「存在しない」と機械的に認定している場合には、当業者ならどう理解するかという観点から、その認定の妥当性を具体的に問い直すことが有効な反論になります。