
こんにちは、知財実務情報Lab. 管理人の高橋政治(弁理士・技術士)です。
私のクライアント様の中で、明細書中に次のような断り書きを記載することを希望されるクライアント様が複数いらっしゃいます。
【0000】
本明細書において、数値範囲を「~」という記号を用いて表す「X~Y」なる表現は、「X以上Y以下」と同義である。また、「X以上Y以下」の表記で規定する数値範囲は、その端点であるX及びYを含む。
このような断り書きを記載することを希望するクライアント様に、この断り書きを記載することの意図を教えてもらいましたので、今回はこれについて記載したいと思います。
日本弁理士会の実務修習および日本弁理士会の育成塾で講師を担当されている谷 和紘 先生に、特許明細書の作成方法について教えて頂きます。
明細書作成における生成AIの利用についても教えて頂けます。
「おおむね一人前の弁理士に近いレベルに到達できる」程度までの内容ですので、企業知財部や特許事務所に所属している初中級者の方には最適だろうと思います。
詳細は以下をクリックして開くページからご確認ください。
1.公用文書では「以上」「以下」がベター
公用文書では「5~10%」と記載するよりも、「5%以上10%以下」のように記載した方がベターのようです。
こちらの文化庁のHPからダウンロードできる「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告) 」のP20には、「~」について、「むやみに多用しない。」と記載されています。つまり、どちらかというと用いない方が良いというニュアンスで説明されていると思われます。
また、Chat GPTに聞いてみたところ、公文書、契約書、規定類では「5~10%」と記載するよりも、「5%以上10%以下」のように記載する方が明確で望ましいとされ、この理由は「5~10%」の場合、両端の値(5%、10%)が含まれるのかが曖昧だから、とのことでした。
特許明細書は公用文書、契約書、規定類ではないものの、ある程度、これらに近いものですので、絶対に「以上」「以下」を用いるべき、とまでは言えませんが、どちらかというと用いた方がよいとは言えるかもしれません。
そうすると、「~」は用いずに全て「以上」「以上」を用いるか、そうでなければ、『「X~Y」なる表現は、「X以上Y以下」と同義である。』と記載しておくことは、意味をなすことになりそうです。
2.中国で「以上」「以下」は端点を含まない説
上記のように「~」ではなく「以上」「以下」は端点の数を含まない、という説があります。例えば「5以上」や「5以下」と記載したとしても、中国では「5」を含まないという説があります。
これについて、こちらや、こちらのサイトによると、中国語で「五以下」「五以上」は5を含まないと考える人が結構いる(約5割)のようです。
しかしこれは日本語から中国語への翻訳の問題です。
つまり、日本語明細書における「5以上」「5以下」を中国語へ翻訳するときに、「5以上」「5以下」のままだと「5を含まない」と解釈されてしまう可能性がある、ということであって、「5または5以下」「5または5以上」という意味となるように中国語へ翻訳すれば問題は無くなります。
問題は、ほとんどの日本人は中国語を理解できないので、日本語明細書における「5以上」「5以下」を中国語へ翻訳した明細書内において「5または5以下」「5または5以上」という意味に翻訳されているのか否かをチェックできない、という点にあるでしょう。
したがって、日本語明細書内に、『「X以上Y以下」の表記で規定する数値範囲は、その端点であるX及びYを含む。』と記載しておけば、日本語明細書内の「以下」「以上」がそのまま中国語明細書内で利用されたとしても、端点を含むと理解される可能性が高めになる、ということになりそうです。
3.まとめ
以上から考えると、日本語明細書で「~」ではなく「以上」「以下」を用いることは必須とは言えませんが、どちらかというと好ましいとは言えそうです。
『「X~Y」なる表現は、「X以上Y以下」と同義である。』との記載も、意味をなすことになりそうです。
また、『「X以上Y以下」の表記で規定する数値範囲は、その端点であるX及びYを含む』を記載しておけば、中国語への翻訳がミスっていても何とかなりそうなので安心できる、とはいえるでしょう。
ただし、そもそもですが、例えば侵害訴訟における権利範囲の解釈において、「5以上」に「5」が含まれるか否かが問題になるケースはほぼないとは言えるでしょう。「5」は「5.000・・・・」を意味しているので、相手方の実施が「5.000・・・・」でないのであれば(ちょうど5であることは考え難いので)、「5以上」でも「5超」でも差が無いことになるからです。

