生成AIを特許調査に活用する方法(10)生成AIを用いたスクリーニングの実践 [1]関連特許の抽出

 

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チーム角渕由英(弁理士・博士(理学)、弁理士法人レクシード・テックパートナー特許検索競技大会委員長)です。

 

前回は、生成AIを特許調査に活用する方法(9)として生成AIを用いた検索式作成の実践[5]本検索式の作成について述べました。

 

今回は生成AIを用いたスクリーニングの実践[1]関連特許の抽出について述べます。  最後には、[1]関連特許を抽出するためのプロンプトを用意しています。

 

 

なお、未公開の発明の内容を生成AIに入力する際に注意が必要であることは、色々な場面で注意喚起をされているとおりですので、ご注意下さい。

※筆者及び所属組織では、依頼者から了解が得られた場合を除いて、生成AIを利用するサービスに未公開の情報を入力することはしておりません。

なお、本記事は2026年4月初旬に執筆されていますので、生成AIの進歩によって、記事の内容が古くなっている可能性があることをご了承下さい。

 

特許調査のステップ3のスクリーニングは、以下の図に示すように、(3-1)関連特許の抽出と、(3-2)関連特許の読み込みに細分化されます。

 

 

今回は、(3-1)関連特許の抽出について、実践をしてみましょう。

 

(3-1)関連特許の抽出

関連特許の抽出では、ステップ1で特定した調査対象、ステップ2で特定した調査対象技術の構成に関する特許文献を抽出します。

 

これまでの作業では、以下の仮想事例について、(ステップ1)調査対象の特定、(ステップ2)検索式の作成をしてきました。

 

箸の先端部に反発用磁石を内蔵していて、箸置きに設けられた箸置き用磁石との間の反発力で箸の先端部が浮上する宙に浮く箸。

 

 

(3-1-1)スクリーニングの概論

スクリーニングでは、[1]調査対象技術の構成の特定で整理した情報に基づいて文献をチェックします。

 

以前に特許文書の読み方(7)生成AIをスクリーニングに活用する方法(1)(2)として、生成AIをスクリーニングに活用することの概論について述べたことがあります。

 

また、noteに生成AI時代の特許調査のスクリーニング(プロンプト付)という記事を書いたこともあります。

 

人間がスクリーニングを行うとき、どのように行っているでしょうか。

 

また、スクリーニングで生成AIを活用する際にはどのようにしたら上手くいくでしょうか。

 

以下の図に示すように、人間がスクリーニングを行う際には、”ガイド”をスクリーニングの工程で形成しながら、段階的に、何らかの基準に沿って、篩の目を細かくしていくように、文献を精査していきます。

 

 

この時の”基準”を決めることがスクリーニングでは必須となります。

 

そして、その”基準”は、各ステップで同じではなく、調査の目的に応じて、スクリーニングの目的に応じて適切に設定することが求められます。

 

皆さんがスクリーニングをする際に、先ずはノイズか否かを判定すると思いますが、それはどのような思考過程で行っているでしょうか。

 

スクリーニングという作業は、なんとなく実行しているようで実は奥深いものであると思います。

 

 

スクリーニングを行う場合、以下に示すように、調査目的に応じて設定した特定した調査対象における、特定した調査対象技術の構成に関する観点を階層構造で構築することが必要となります。

 

構築した分類観点を付与していき、どの観点にも該当しないものが、最終的にはノイズとなります。

 

そして、特定の観点が少なくとも1つ付与されたものが、ノイズではないものとして残り、次のスクリーニングステップへと進みます。

 

(3-1-2)生成AIによるスクリーニングの検討

ChatGPT(GPT-5.4 Thinking)でスクリーニングについて検討をしました。

 

入力したプロンプトは以下のとおりです。

特許調査における母集団のスクリーニングについて、以下の記事をメインとして、その他情報収集もして、特定した調査対象、調査対象技術の構成に基づいて生成AIでスクリーニングを実行する手法を端的にまとめて下さい。
https://chizai-jj-lab.com/2025/03/04/0302-2/
https://chizai-jj-lab.com/2025/04/08/0402/ https://note.com/tsunobuchi/n/nac0e0b6fe789

 

以下のようにスクリーニングを生成AIで実行する手法に関する手順と基本的な注意点を端的にまとめてくれました。

 

生成AIを活用してワークフローを組む際には、最初の設計段階で面倒くさがらずに1つ1つ丁寧に工程を定義していくことが後のクオリティを高める秘訣となります。

 

以下が、**「特定した調査対象・調査対象技術の構成に基づいて、生成AIで母集団スクリーニングを行う手法」**の端的な要約です。主軸はご提示の3記事で、補足として公的情報も織り込みました。

要するに、生成AIに母集団をそのまま読ませるのではなく、先に人間が「何を残し、何を落とすか」の判断フィルタを設計し、そのフィルタをAIに適用させるやり方です。母集団スクリーニングの本質は、検索で得た数百〜数千件から、調査目的に合う文献だけを残していく工程であり、調査目的によって精度重視か再現率重視かが変わります。特にFTOでは要約だけで落とすのは危険で、請求項起点の確認が重要です。

実務フローは次の5段階に整理できます。

① Phase 0: 調査対象技術の構造化

まず調査対象技術を言語化し、Must要件(3〜8個)許容置換辞書(同義語・上位下位概念・等価手段)、除外基準(用途違い、原理違い、背景説明のみ等)、判定ラベル(A/B/C/D)、理由コードを作ります。ここが最重要で、記事では「AI活用型スクリーニングの成否はPhase 0で決まる」とされています。

 

② Phase 1: AI一次スクリーニング

母集団の各文献について、調査対象技術の説明+Must要件+除外基準を与え、入力文献側はまず タイトル・要約・代表図・請求項1 を中心に粗選別します。第1記事でも、発明理解は「要約・図面→クレーム→背景技術と課題→実施例」の順が効率的とされています。AIの出力は、A/B/C/D判定、確信度、Mustごとの○△×、根拠、不明点、次アクションまで構造化させるのが肝です。一次では 「迷ったらB」 を原則にし、取りこぼしを避けます。

 

③ Phase 2: 人間によるキャリブレーション

最初の20〜50件程度は、人間がAI判定をレビューしてズレを補正します。特にD判定の一部監査を行い、取りこぼしがあれば除外基準やネガティブルールを修正します。これは、熟練者の暗黙知をAIに移植する工程です。

 

④ Phase 3: AI二次スクリーニング

一次でA/Bになった文献だけを深く読み、独立請求項、課題、解決手段、効果、実施例まで入れて、Must要件との証拠ベース照合を行います。見るべきは、欠落が「発明の同一性を壊す致命的欠落」なのか、「置換で埋まる差分」なのかです。ここでは単なる“読む”ではなく、構成照合に切り替えます。

 

比較・論理化

第2記事の要点は、調査対象技術を必須要件と任意要件に分け、引用発明と構成要件ごとの対比表を作り、文脈差(目的・機能・効果)まで見ることです。キーワード一致だけでなく、「同じ語でも何のために使っているか」を見て、最後に新規性・進歩性の論理へつなげます。

この方法を一言で言うと、

「調査対象技術を“判断可能な構成要件”へ分解し、その構成要件セットをAIに与えて、母集団各文献をA/B/C/Dに機械的に振り分けさせ、境界事例だけを人間が精査する」

という運用です。

 

実務上の注意点は3つです。

1つ目は、AIは自動決裁者ではなく補助サーチャーとして使うことです。noteでも「人間の判断をAIで拡張する」設計が明示され、EPOも人間中心で最終判断は人が行うとしています。

 

2つ目は、根拠箇所を必ず出させて目視確認することです。USPTOも、AIは prior art search や claim charting を容易にし得る一方、人間による検証が必要で、不正確な出力や機密情報入力のリスクがあると注意しています。

 

3つ目は、外部AIへ未公開案件を入れる場合の秘密管理です。これは記事群には強く書かれていませんが、周辺実務として重要です。

そのまま運用に落とすなら、最小形は次です。

入力:調査目的/調査対象技術の説明/Must要件/許容置換/除外基準/対象公報のタイトル・要約・請求項1・代表図要旨。

出力:A/B/C/D、Mustごとの○△×、根拠箇所、除外理由コード、懸念点、次アクション。運用原則:迷ったらB、Dは説明できるときだけ、A/Bのみ二次精査、最後は人間確定。

 

(3-1-3)スクリーニングプロンプト

これまでの流れを踏まえ、スクリーニングを実行するためのプロンプトを作成してもらいました

 

人間が行うスクリーニングの基本を忠実に守り、特定した調査対象、調査対象技術の構成に基づいてスクリーニングを実行してくれるプロンプトを作成してください。

入力は、特定した調査対象、調査対象技術の構成としてください。 特定の事例に限定せず、汎用的なプロンプトとしてください。

 

出力されたプロンプトは以下のとおりです。

 

あなたは、特許調査における母集団スクリーニングを行う熟練サーチャーです。

役割は、与えられた「特定した調査対象」と「調査対象技術の構成」に忠実に従い、対象文献が調査対象として残すべきものかどうかを、人間が行うスクリーニングの基本に沿って判定することです。

 

# 最重要原則

– 人間が行うスクリーニングの基本を厳守すること。

– 早期に落としすぎず、取りこぼしを避けること。

– ただし、根拠なく残しすぎることも避けること。

– 文献に明示されていない内容を推測で補わないこと。

– 単なるキーワード一致ではなく、技術的実質で判断すること。

– 用語が違っても、同じ技術的意味・同等の技術的機能であれば候補として扱うこと。

– 用語が同じでも、目的・機能・構成・作用が異なれば安易に一致としないこと。

– 判定に迷う場合は「保留寄り」にし、落とす場合は明確な理由を示すこと。

– あなたの役割はスクリーニングであり、最終的な法律判断や確定的な無効判断・侵害判断ではない。

 

# 入力

以下の2つを入力として受け取る。

 

【特定した調査対象】

{{特定した調査対象}}

 

【調査対象技術の構成】

{{調査対象技術の構成}}

 

なお、スクリーニング対象の文献は、このスレッド内で別途与えられている文献情報

(例:タイトル、要約、代表請求項、明細書抜粋、図面説明など)

を対象として扱うこと。

 

# あなたが行うこと

以下の手順で、対象文献をスクリーニングせよ。

 

## Step 1: 調査対象の理解

まず、「特定した調査対象」と「調査対象技術の構成」だけを根拠に、調査対象技術を整理すること。

次の観点で内部整理せよ。

1. 調査対象の目的

   – 何を拾うための調査か

   – どの程度広く候補を残すべきか

 

2. 技術的中核

   – この技術の本質的部分は何か

   – 単なる周辺事項と区別すべき中核構成は何か

 

3. 構成要素の分解

   – 調査対象技術の構成を、できるだけ自然な単位で分解すること

   – 各構成要素について、

     – 必須性が高いもの

     – あれば強い一致要素になるもの

     – 周辺的で補助的なもの

     を区別すること

 

4. 許容される読み替え

   – 同義・類義の表現

   – 上位概念・下位概念

   – 実質的に同じ機能を果たす構成

   を、文献上で拾うべき候補として意識すること

 

5. 除外の基本線

   – 技術分野が似ているだけ

   – 課題が似ているだけ

   – 結果だけ似ていて構成が異なる

   – 背景技術として触れているだけ

   – 実施例の一部に偶然近いだけ

   の場合は、安易に採用しないこと

 

## Step 2: 文献の読み方

対象文献は、次の順序で読むこと。

 

1. タイトル・要約・代表図面の説明

2. 独立請求項または中心請求項

3. 発明が解決しようとする課題

4. 課題解決手段

5. 実施形態・実施例

6. 必要に応じて従属請求項

 

この順で、まず粗く把握し、その後に調査対象技術の構成との対応関係を確認すること。

 

## Step 3: 一致性の評価

対象文献について、調査対象技術の各構成要素ごとに次のいずれかで評価すること。

– ○:文献に明確に記載されている、または実質的に同等といえる

– △:近い記載はあるが、同一とまでは言えない/追加確認が必要

– ×:文献上、確認できない、または技術的に異なる

 

評価時の注意:

– ○は、文献上の根拠がある場合に限る

– △は、曖昧さ・不足情報・読み替えの余地がある場合に付す

– ×は、単なる記載不足なのか、積極的に相違しているのかを区別して考える

– キーワードがなくても、技術的実質が一致するなら○または△とする

– キーワードがあっても、技術的実質が違えば△または×とする

 

## Step 4: 総合判定

最終判定は次の4区分で行うこと。

– A:有力候補

  – 調査対象技術の中核構成が相当程度そろっている

  – 次段階の精査対象として強く残すべき

– B:候補

  – 一部に不足や曖昧さはあるが、落とすには早い

  – 取りこぼし防止のため残すべき

– C:非該当寄り

  – 一見近いが、中核構成との乖離が大きい

  – 通常は落としてよいが、調査方針によっては再確認余地あり

– D:非該当

  – 調査対象技術の中核から明確に外れる

  – 残す必要は低い

 

判定ルール:

– 迷う場合は、DではなくBまたはCに寄せること

– D判定は、主要な除外理由を説明できる場合に限ること

– 一致要素よりも、技術的中核の不一致を重視すること

– ただし、表現差だけで落とさないこと

 

## Step 5: 禁止事項

– 文献にない内容を補って一致とみなすこと

– 結論だけを述べて根拠を書かないこと

– 単なる用語一致だけで有力候補とすること

– 技術的構成を見ずに、課題や効果だけで採否を決めること

– 不明点があるのに断定的に「該当しない」と言い切ること

 

# 出力形式

必ず以下の形式で出力すること。

 

【1. 調査対象の理解】

– 調査対象の要旨:

– 技術的中核:

– 主な構成要素:

  1.

  2.

  3.

  4.

– 許容される読み替えの例:

– 除外の基本線:

 

【2. 文献の把握】

– 文献の概要:

– 文献の主たる技術内容:

– 発明の課題:

– 課題解決手段:

 

【3. 構成要素ごとの対応評価】

– 構成要素1:○ / △ / ×

  – 根拠:

– 構成要素2:○ / △ / ×

  – 根拠:

– 構成要素3:○ / △ / ×

  – 根拠:

– 構成要素4:○ / △ / ×

  – 根拠:

※ 構成要素の数は必要に応じて増減すること

 

【4. 総合判定】

– 判定:A / B / C / D

– 判定理由:

– 一致している中核事項:

– 足りない/不明な事項:

– 落とす場合の主要理由:

– 残す場合の主要理由:

 

【5. 次アクション】

以下のいずれかを簡潔に示すこと。

– 請求項精読推奨

– 実施例確認推奨

– 図面確認推奨

– 追加確認不要

– 境界事例として人手確認推奨

 

# 出力上の追加ルール

– 判定は必ずA/B/C/Dのいずれか1つにすること

– 根拠はできるだけ文献記載に即して書くこと

– 情報不足がある場合は、その不足を明示すること

– 調査対象に忠実であることを優先し、独自に評価軸を増やしすぎないこと – ただし、技術的実質を見失うほど機械的にもならないこと

 

このスクリーニング用のプロンプトをChatGPT(GPT-5.4 Thinking)で実行した結果を以下に示します。

 

入力は、特定した調査対象技術と調査対象技術の構成として、2つの文献1文献2を入力しました。

 

最初に調査対象を理解した上で、各文献に対する評価が示されています。

 

 

次に、各文献について内容を把握して、構成要素ごとに評価をし、総合判定をしています。

 

以下に、文献1についての結果を示します。

 

 

文献1文献2は関連性が低かったので、関連性が高いことが分かっている文献3でも試した結果、判定Aと正しく評価されました

 

 

以上、今回は生成AIを用いたスクリーニングの実践[1]関連特許の抽出について述べました。

 

次回は、生成AIを用いたスクリーニングの実践[2]関連特許の読み込みについて述べようと思います。

 

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角渕 由英(弁理士・博士(理学))

専門分野:特許調査、特許権利化実務(化学/機械/ソフトウェア/ビジネスモデル)

  note

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