生成AIを特許調査に活用する方法(6)検索式作成の実践[2]予備検索

 

こんにちは、知財実務情報Lab.専門家チーム角渕由英(弁理士・博士(理学)、弁理士法人レクシード・テックパートナー特許検索競技大会委員長)です。

 

前回は、生成AIを特許調査に活用する方法(5)として検索式作成の実践[1]調査対象技術の構成の特定について述べました。

今回は生成AIを用いた検索式作成の実践[2]予備検索について述べます。

最後には、[2]予備検索をするためのプロンプトを用意しています。

 

お知らせ

以前と比べて、最近は外国出願するケースが増えていますよね。

外国の中でもどこの国に出願するかですが、やっぱり、米、欧、中、韓が多いですよね。これらの主要国は、今も昔も外せません。

 

ここで1つ困ったことは米、欧、中、韓の中間対応の方法が異なるということです。

その違いを理解していないと、うまく権利化できません。

そこで、米、欧、中、韓の中間対応の違いをしっかり理解したいなぁ、と考え、これを解説するセミナーを企画しました。

詳細は以下の通りです。

 

なお、未公開の発明の内容を生成AIに入力する際に注意が必要であることは、色々な場面で注意喚起をされているとおりですので、ご注意下さい。

※筆者及び所属組織では、依頼者から了解が得られた場合を除いて、生成AIを利用するサービスに未公開の情報を入力することはしておりません。

なお、本記事は2025年10月末に執筆されていますので、生成AIの進歩によって、記事の内容が古くなっている可能性があることをご了承下さい。

 

特許調査のステップ2の(2)検索式の作成は、以下の図に示すように、検索式の作成におけるタスクは、(2-1)調査対象技術の構成の特定と、(2-2)予備検索、(2-3)特許分類の特定、(2-4)キーワードの整理、(2-5)本検索式の作成に細分化されることは前回も述べました。

 

 

今回は、(2-2)予備検索について、実践をしてみましょう。

 

(2-2)予備検索

予備検索では、特定したキーワードを用いて下調べとしての予備検索をして関連する特許文献を見つけます。

予備検索の目的は、本検索で用いる、(2-3)特許分類の特定と、(2-4)キーワードの整理であり、調査対象技術にそれなりに近い特許文献を幾つか見つければよいことになります。

 

(2-2-1)特定した調査対象技術

前回、調査対象技術の構成の特定では、以下の仮想事例について、「技術分野」、「課題」、「解決手段」、「効果」の観点から検討をしました(生成AIで利用できるプロンプトも紹介しました)。

 

箸の先端部に反発用磁石を内蔵していて、箸置きに設けられた箸置き用磁石との間の反発力で箸の先端部が浮上する宙に浮く箸。

 

 

プロンプトをGemini(2.5Pro)で実行することで、調査対象技術を以下のように特定しました。

 

  • 技術分野:

食事用具、箸置き

  • 課題:

従来の箸置きでは、箸の先端部が箸置きの表面に接触するため、箸置きを介した汚れや雑菌の付着を防ぐことが難しく、衛生面の向上が限定的であった。

  • 解決手段:

箸の先端部と、該先端部を載置する箸置きの双方に磁石を設ける。両磁石を、対向する磁極が同極となるように配置し、その磁気的な反発力によって箸の先端部を箸置き表面から浮上させて非接触で保持する。

  • 効果:

箸の先端部が箸置きに物理的に接触することを防止できるため、食事中における箸の衛生状態を向上させることが可能となる。

 

(2-2-2)予備検索の実行

ChatGPT(GPT-5 Thinking)で予備検索を実行しました。

約1分間で近い特許文献を特定してくれました。

 

 

これまで、人がJ-PlatPatなどで式を入力して検索を行い、試行錯誤して予備検索式を修正し、ヒットした集合に含まれる特許文献を精査していましたが、予備検索としては全く問題ないレベルで、そして人間には不可能なレベルのスピードで、関連する特許文献を抽出できました。

上述した予備検索の目的を考慮すると、生成AIを活用することが非常に有効であることが分かります。

 

また、以下のように、調査対象技術に関する特許分類と、キーワードを含む予備検索式を提案してくれました。

 

 

(2-2-3)予備検索用のプロンプト作成

現在は非公開となっている角渕の知見を学習させて調査のノウハウを教え込んだGPTs(知財実務情報Lab.の有料セミナー参加特典として配布)を用いて、予備検索を実行するためのプロンプトを作成してもらいました。

 

 

先ずは、特許調査の流れを聞いてみました。

 

 

その上で、予備検索用のプロンプトを作成してもらいました。

 

 

出力されたプロンプトは以下のとおりです。

黄色のハイライト箇所に、調査対象技術を入力して実行するだけです。

あなたは、知財実務に世界一詳しいプロンプトエンジニア兼リサーチエージェントです。特許・論文・規格・製品カタログ・テックブログ・ニュース・動画まで、WEB情報を多言語で横断し、侵害予防・無効資料・先行技術の“予備検索(プレ検索)”に最適な母集団を短時間で作り、可読性の高い概要表で提示してください。追加質問は行わず、ここに与える自然文だけで完遂します。

【入力(ユーザーからの唯一のインプット)】

<<対象技術の自然言語説明>>

 

【前提・役割】

– 目的:本検索の前段として、技術の本質把握・同義語/分類の抽出・代表文献の把握・作業量見積りを可能にする“高適合な小母集団”を構築する。

– 対象範囲:特許(各国/ファミリ)、学術論文、規格/標準、製品カタログ/データシート(PDF含む)、技術ブログ/メーカーサイト、動画(講演/デモ/レビュー)。

– 言語:日本語・英語を主軸に、中国語簡体/繁体、韓国語、ドイツ語、フランス語へ自動展開(用語の機械翻訳+専門同義語の正規化)。

– 倫理・品質:出典リンク必須。要約は事実ベースで簡潔に。重複(特許ファミリ/再掲記事/ミラー)を統合。

 

【内部手順(思考過程は開示しないで最終成果のみ出力)】

1) 技術の構造化:入力文から「要素・属性・関係・作用効果(What/How/Why)」に分解し、1行の技術コア文を作る。

2) 多言語同義語展開:専門用語・製品名・動詞名詞化・表記ゆれをJP/EN/ZH/KR/DE/FRで列挙し、肯定/否定語も整理。

3) 検索計画(ソース別)を自動策定:

   – 特許:J-PlatPat、Espacenet、Google Patents。まず高適合の狭い式→後で拡張式も提示。

   – 論文/規格:Google Scholar、arXiv/IEEE/ACM、ISO/IEC/ETSI等。DOI優先。

   – 製品/資料:site:pdf、メーカー公式、型番・SKU、データシート。

   – Web記事:公式ドキュメント、技術ブログ(著名ベンダ/研究機関優先)。

   – 動画:YouTube等の字幕/概要からタイムスタンプ付きで抜粋。

4) 取得・抽出:各種メタデータ(国/管轄、出願/公開年、権利者/著者、分類、要旨、リンク、動画は該当秒)。

5) 正規化・ランク付け:重複統合、最新性・技術一致度・信頼性でスコア(0–5★)。

6) 出力:まず“概要表(Markdown)”、続けて洞察サマリ、J-PlatPat式・広域式、同義語/分類リスト、次アクション。

 

【検索式ポリシー(特許/論文/WEB共通の作法)】

– 代表キーワード+同義語をAND/OR/NOTで構成し、site: / filetype: / intitle: / inurl: を適宜併用。

– 数量詞/範囲(例えば「nm」「kHz」等)は数値バリエーションを含め正規化。

– 動画は transcript:キーワード と time=mm:ss を併記(可能な場合)。

 

【J-PlatPat専用ルール(出力に必ず含める)】

– AND:*、OR:+、NOT:-、CL/TX必須、優先順位は[]、近接は「用語1,20N,用語2/TX」。

– FI/Fターム・CPCを候補化して式に併用。式は500字以内に最適化。

– 例式の書式:

  [ (候補FI/Fターム)/FI ] * [ (中核語+重要同義語)/CL ] * [ (要素A),15N,(要素B)/TX ] – [ (ノイズ語)/TX ]

 

【出力フォーマット(この順に、Markdownで必ず出力)】

### 概要表(予備検索の要点)

| 種別 | 国/出所 | 年/優先日 | 権利者/著者 | タイトル(短訳可) | 技術要点(What/How/Effect) | 対応構成要素 | ★一致度 | リンク | 備考(動画はmm:ss) |

|—|—|—:|—|—|—|—|:–:|—|—|

 

(表は最大15行、特許5・論文5・資料/Web3・動画2を目安。各セルは簡潔に)

 

### 重要な洞察(箇条書き3–6点)

– 例:主要プレイヤーと典型構成、差異化パターン、注意すべき先行技術の“肝”、規格影響、回避設計のヒント 等。

### 代表出典(番号付き)

1. [出典名/公報番号/DOI/URL] – 一言要約

2. …

 

### J-PlatPat:予備検索式(高適合・<=500字)

– CL/TX併用の狭い式(NEARBY使用)

– 候補FI/Fターム

– ノイズ除去の-語

(式は実際に貼り付けて使える完結形)

 

### Google Patents / Espacenet:英語広域式(再現重視)

– 英語同義語を“OR”で圧縮、CPCやassignee名も付与

 

### 論文/規格クエリ

– Google Scholar / arXiv / IEEE(例:intitle: / author: / year: 範囲)

– 規格団体サイトのsite:とfiletype:pdfの併用

 

### 同義語・表記ゆれ(JP/EN/ZH/KR/DE/FR)

– 要素A:…

– 要素B:…

– 作用/効果語:…

 

### 推奨次アクション

– 例:このFI/Fタームで本検索へ拡張/この出願人の周辺を横展開/この動画の該当時刻を精査 等。

 

【品質基準】

– ソースは学術/公式/一次情報を優先。出典ごとにリンク必須。

– 特許はファミリ/最先の優先日を明記して重複統合。

– 推測や未確認は明示的に“仮説”とラベル。 – 内部思考は提示せず、最終結果のみを出力。

 

このプロンプトをChatGPT(GPT-5 Thinking)で実行した結果を以下に示します。

一覧形式でヒットした情報をまとめてくれました。

 

 

また、調査の所感についても述べられています。

 

候補となる特許分類を提案してくれています。

 

さらに、キーワードについて、各国の言語で同義語も含めて検討がされました。

 

 

これらの情報を基にして、本検索で用いる、(2-3)特許分類の特定と、(2-4)キーワードの整理を行うことになります。

 

以上、今回は生成AIを用いた検索式作成の実践[2]予備検索について述べました。

次回は、生成AIを用いた検索式作成の実践[3]特許分類の特定について述べようと思います。

 

 

角渕先生からのお知らせ

特許調査における生成AI活用において前提となる基本的な考え方・使い方のコツについて、既に生成AIを調査に活用している方だけではなく、これから生成AIを活用したい方にもわかりやすく、誰でもすぐに実践できるレベル感で話をしたYouTube動画、「特許調査における生成AI活用の最前線」が公開されています。

詳細はこちらからご確認ください。

 

 

角渕 由英(弁理士・博士(理学))

専門分野:特許調査、特許権利化実務(化学/機械/ソフトウェア/ビジネスモデル)

  note

弁理士法人レクシード・テック https://lexceed.or.jp/