こんにちは、知財実務情報Lab. 専門家チームの田中 研二(弁理士)です。
今年の冬休みはなんと9連休だそうです。
仕事から解放されてのびのびと過ごしたり、久々に帰省したり、家族サービスに勤しんだりと様々に過ごされることと思いますが、日頃なかなかまとまった時間が取れない実務家の皆様にとっては、集中して勉強する良い機会でもあります。
そこで、今回は「腰を据えて読みたい特許本」を紹介してみようと思います。 勉強好きな特許実務家の皆様は、ぜひ休み期間しかできない贅沢な勉強をしてみませんか?
” ビジネスモデル特許の権利化の奥義 ”(?)を田村先生に教えてもらいましょう。
発明のヒアリング、発明の捉え方、クレーム作成、中間対応のポイントまで、”ビジネスモデル特許の権利化の全て”を解説して頂きます。
また、「どうすれば権利が取れるのか」はもちろんのこと、その前提としての「どのようなビジネスモデル特許を取得すれば事業に資するのか」の考え方についてもご教示頂きます。
ビジネスモデル特許に携わる方は、ぜひご参加ください。
詳しくは以下をご参照ください。↓
腰を据えて読みたい特許本
1.クレーム編
外国出願を見据えた日本語クレームドラフトの実務 -電気・機械系のクレーム作成ワークブック
「ワークブック」と題するだけあって、クレーム作成の方法論だけでなく、いくつもの演習事例が掲載されています。
こうした演習形式の本は、時間が無いとなかなか手を付けづらいものですが、冬休みなら安心!
何かを習得するためには、もちろんインプットも必要ですが、手を動かすことはそれ以上に重要だと思います。インプットした学びを演習でアウトプットすることで、学びが大きく深まるはずです。
難易度は結構高めですが、電気・機械分野のクレーム作成スキルを高めたい方にはとてもおすすめです。
2.進歩性編
永野周志弁護士が数々の判例分析を通して体系化された進歩性の判断基準をまとめた本です。前回の記事でも紹介させていただきました。
多数の裁判例が深く分析されており、読み切るのにはかなりの体力を要しますが、冬休みなら安心!
進歩性をマスターしたい方には必読の書で、私もこの本を読んでから進歩性の解像度が爆上がりしました。 今は発明推進協会のWebサイトからも購入できるようです。
3.特許戦略編
御社の特許戦略がダメな理由 9割の日本企業が、特許を取っても利益に結びつけていない
直球の特許実務からは少し離れますが、「なぜ特許権を取得すべきなのか」「取得した特許権をどう使うべきなのか」といった核心的な論点について丁寧に説明されています。
実務家であればこそ、「特許出願すべき理由」は常に説明できるようにしておきたいもの。
日頃の実務に追われているとついつい手放しがちな視点ですが、冬休みなら安心!
今こそ時間を取って、企業の利益を最大化する手段としての特許について改めて学んでみるのもよさそうです。 長年絶版で中古品しか手に入りませんでしたが、最近Kindle版が出ました。
4.特許法編
田村善之先生の東大での講義を一冊の本にまとめたものです。
もともと田村先生のご説明は非常にわかりやすいのですが、特に本書は口語体で頭に入りやすく、難しい論点でもすっと理解した気になります(本当に理解できているかはともかく……)。
特許法の教科書として作られた本書ですが、最近の裁判例や技術論もしっかりと盛り込まれており、実務的な観点でも非常に学びの多い本です。
十分な時間がないとなかなか読み切れないかもしれませんが、冬休みなら安心! 改めて特許法を学び直すという意味では、ベテランの先生方にこそおすすめかもしれません。
私なりの読み方
せっかくなので、私なりの本の読み方についても紹介しておきます。
私の場合、本を一読しただけで頭に刻み込むことができないので、学びをまとめたメモを必ず残すようにしています。
どのようなメモにするかは場合によりますが、たとえば書籍冒頭の空白ページに手書きで本の内容をまとめてみたり、Notionに書籍ごとのまとめを作成したりしています。
上記の「特許権・進歩性判断基準の体系と判例理論」だと、「要件置換型」「要件付加型」などの類型ごとに進歩性の論点(判断基準、動機付け、阻害要因など)をExcelの表にまとめながら読んでいました。この表は今でもよく参照しています。
学びや気づきを書き出しながら読むと、頭の整理になりますし、後から内容を思い返すのにもとても有用なのでおすすめです。
とはいえ、本の読み方は人それぞれ。貴重な冬休みですから、ぜひご自身に一番よい形で読書を楽しんでください。
それでは皆様、どうぞ良いお年をお迎えください!
田中 研二(弁理士)
専門分野:特許権利化(主に機械系、材料系)、訴訟