『論文勉強会』のススメ

こんにちは、知財実務情報Lab. 専門家チームの田中 研二(弁理士)です。

 

皆様は、実務家として日々新たな知見やスキルを求めていることと思います。

 

もちろん実務をこなすと経験は蓄積されていきますが、一人で得られる経験にも限界はあるもの。日々の実務では得られにくい知識やノウハウを学ぶ場として、事務所内や会社内で『論文勉強会』を開催するのはいかがでしょうか?

 

 

 

 

論文勉強会とは

勉強会に決まった形式はありませんが、たとえば週一で曜日を決めて1時間程度、有志で集まって、気になる論文の読み合わせを行うような形式がよくあるスタイルかと思います。

 

論文には、執筆された方々の経験や知恵が詰まっており、最新の法改正や判例、実務上の工夫など、業務に直結する情報が豊富に掲載されています。しかし、内容が難しく自分だけでは読み切れなかったり、そもそも一人で論文を読むのはなかなか継続できなかったりもします。

 

そこで『勉強会』というスタイルにして、みんなで無理なく定期的に続けよう! …というのが、この『論文勉強会』の目的の一つです。

 

私も事務所で有志の論文勉強会を開催していますが、とにかく無理なく負担なく、予習なしで当日集まって読み合わせるだけという点を一番重視しています。

 

論文の選び方

代表的な実務系論文誌として、日本弁理士会が発行している『パテント』と、 日本知的財産協会(知財協)が発行している『知財管理』が挙げられます。

 

いずれも基本的に月刊で、知財に関する最新トピックスや研究成果、判例紹介など、実務的な論文を多数掲載しています。(※知財協の『知財管理』は原則として会員しかアクセスできないので、所属先が知財協の会員かどうか確認してみましょう。)

 

そのほか、特許庁審判部が主催する審判実務者研究会の報告書、審査官・審判官等で構成される特許庁技術懇話会(特技懇)の会報の判例紹介記事なども、実務的な情報が詰まった良い題材になります。

 

まずは直近のパテント誌の目次を眺めてみて、興味のある論文をピックアップして始めてみるとよいでしょう。検索システムから気になるトピック(進歩性など)に関する論文を検索することもできます。

 

ちなみに、私が開催している勉強会では、まずメンバーに気になる論文を自由に挙げてもらった後、各々が読みたい論文に投票してもらい(複数投票可)、得票数の多い論文から順に読んでいくことにしています。

 

なお、論文は著者の見解や経験を反映しているので、当然ながら100%正解が書かれているわけではありません。論文を読みながら日頃の実務への生かし方を考えてみたり、他のメンバーと意見交換をすることはとても重要です。

 

 

勉強会のメリット

メリット①:継続的な学び

定期的な勉強会にすることのメリットは、言うまでもなく継続性が担保されることです。

 

興味のある論文を一本読むことはできても、それを継続するのは意外と難しいものですが、定期的なイベントとしてスケジュールに登録してしまえば(そして予習不要など参加ハードルを限りなく下げてしまえば)、意外と続けられるものです。

 

『パテント』や『知財管理』には毎月新しい論文が掲載されるので、勉強会のネタが枯渇することもありません。 もう一つ大事なポイントは、実務的な知識やスキルの習得に意欲的な同僚を複数名見つけて勉強会メンバーに引き込むこと。基本的にこういう勉強会は人が減っていくものなので、勉強熱心なコアメンバーを早期に見つけることがとても重要です。

 

 

メリット②:論文以外の知見や気づき

単純に論文を音読するだけでなく、読み合わせ中に気になったことは自由に議論するようにするとよいでしょう。

 

論文の内容から波及して、日頃の実務の疑問や悩みを相談したり、アドバイスし合うことで、一人では得られない気づきを得られることは多いです。経験豊富なメンバーからは、書籍や論文には書けないような生々しいアドバイスをもらえることもあり、非常に貴重な機会になります。

 

また、事務所や会社内の勉強会であれば、具体的な担当案件を例に挙げて議論することもできるので、一般論に収まらない”超”実践的な勉強会となります。 こうした自由な議論を通じて、参加者の間で個々の暗黙知が共有されると、結果として組織全体のレベルアップにも繋がります。

 

 

メリット③:所内/社内のネットワーキング

忙しい中で時間を割いて勉強会に参加してくれるのは、意欲的で向上心の高いメンバーばかりです。このため、勉強会での交流は自分自身のモチベーションアップにも繋がります。

 

また、普段接点のないメンバーと知り合えるので、組織内のネットワークが広がり、部署を超えた業務上のやりとりもスムーズになります。 勉強会メンバーで暑気払いや忘年会など定期的に懇親会を開くのもオススメです。

 

まとめ

今回は柔らかめの題材として、『論文勉強会』について紹介してみました。

 

興味を持たれた方は、ぜひメンバー集めから始めてみてはいかがでしょうか。きっと多くのメリットを実感できるはずです。

 

 

田中 研二(弁理士)

専門分野:特許権利化(主に機械系、材料系)、訴訟