こんにちは、知財実務情報Lab.管理人の高橋(弁理士・技術士)です。
拒絶理由通知書・拒絶査定への応答として提出する意見書・審判請求書に判例を書くべきかについて、種々の意見があります。
本日はこれについて個人的な意見を述べたいと思います。
特許検索の初中級の方も参加いただけますし、一通り調査の知識を身に付けた上級者の方が、更に高いレベルに至るための知識を得ることも期待できると思いますので、特許調査に関わる方は、ぜひご参加ください。
「理論的なことよりも、実務的なことを解説する」、
「実務ではどのように考えて、具体的にどのような検索式を作るのかを開示する」
というコンセプトで、講師の角渕先生も「過去最高に手の内を公開する」との意気込みでご講演頂きます。
詳しくは以下をご参照ください。↓
1.基本的な考え
私は現時点で約21年間も特許事務所に所属していて、特許庁へ提出した意見書・審判請求書の数は相当数になります。
数えたことはないのですが、意見書または審判請求書を週に1件提出したと仮定すると、計算上、20年間で約1,000件になるで、おそらくそれくらいなんだろうと思っています。
また、拒絶理由通知書や拒絶査定への応答タイミングで、審査官の方と直接会って面接したり、電話で話したりすることも、相当回数経験しました。
これらの経験に基づくと、おそらく審査官の多くは「審査基準の通りに判断するのが審査官の仕事であり、裁判例なんてどうでもよい。」と考えていると思います。
したがって、私は基本的には意見書や審判請求書に判例を挙げません。
意見書や審判請求書には、審査基準に則ってこのように判断すれば特許査定になるよね、というストーリーを書くだけです。
判例ではなく、審査基準をベースにして反論する、ということです。
2.例外
例外として意見書や審判請求書に判例を挙げて効果的なのは、「知財高裁や最高裁で新しい判例がでたが、未だその考え方が審査基準に反映されていない期間に提出する場合」であると思います。
例えば現在、利用されている審査基準は平成27年に全面的に改訂されたものですが、このタイミングで「課題が新規であれば進歩性が肯定され得る」という考え方が審査基準の中に記載されました。
それよりも前の審査基準では、この考え方は記載されていません。
しかし、この考え方は、平成27年よりも前にいくつかの判例において採用されており、特許庁における審査においてもこの考え方を採用する方向で「次の審査基準の改訂でこれを追加しよう」と検討されていた時期があります。
そのような時期においては、私も判例を挙げて「判例と同様、本件は課題が新規であるから進歩性がある」という主張を行っていました。
実際、この主張が認められて進歩性が肯定され、特許査定が得られた件はいくつもあります。
3.別の観点
しかしながら、「審判では、次に行われる可能性がある裁判を意識して、審査と比較すると判例を意識した判断が行われる傾向がある」という情報もあります。
それが本当かどうかは分かりませんが、もし、それが本当ならば審判請求書には判例を書いた方がベターなのかもしれません。
4.さらに別の観点
また、「出願人が玄人筋であるという印象を持つと、審査官としては迂闊な審査をし難くなる」という情報もあります。
それが本当ならば、意見書には判例を記載して、玄人っぽい雰囲気を醸し出した方が良いかもしれません。
5.結論
以上をまとめると、意見書・審判請求書では審査基準に記載の考え方に則って反論するのが基本であり、さらに判例を挙げることができるのであれば、サブ的に判例を挙げて反論してもよい、というのが私の個人的な意見となります。
審査基準に即した反論を行わず、流行りの判例をもってきて反論しようとする人が偶にいますが、それは止めたほうがよいです。
私の個人的なホームページから過去の論文を全て無料でダウンロードできます。こちらからチェックしてみて下さい。ほとんど役立たない日記のようなブログ記事もあります。