身の回りにあるものを利用して、実務力を磨こう!

こんにちは、知財実務情報Lab. 専門家チームの田村良介(弁理士、ライトハウス国際特許事務所)です。

 

突然ですが、皆さん、コンピュータゲームで遊ぶことはあるでしょうか。例えば、ソニー・コンピュータエンタテインメント社のPlayStation(以下、PS)。PS5は、昨今の半導体不足もあり、なかなか手に入らないようですね。私は、PS4をプレイしています。

 

今回は、このPS4のコントローラについて、お話をさせていただきます。このコントローラですが、左右の親指、人差し指で複数のボタンを操作して、多数の情報を比較的簡単に入力することのできる優れものです。 

  

  

(https://www.playstation.com/ja-jp/accessories/dualshock-4-wireless-controller/ 参照。
左はコントローラを上から見た写真、右はコントローラをユーザが把持する側とは反対の背面から見た写真)

 

 

例えば、PS4のコントローラの本体上面には、2つのジョイスティックが設けられています。ジョイスティックは、スティックを傾けることで方向入力が行えるものです。コントローラ表面から上方向に伸びていて、側面から見るとT字型の形状をしています。本体上面の右側に目を向けると、ユーザから見てジョイスティックよりも奥側に4つのボタン(○、△、□、×印のボタン)が設けられています。

 

実は、このジョイスティックと4つのボタンは、絶妙に計算された位置に配置されています。

 

仮に、ジョイスティックと4つのボタンが、互いに入れ替わった位置にあったとしたら、どうなるでしょうか。ジョイスティックは、4つのボタンと比べて高さを有していますから、ジョイスティックが親指から遠い位置にあると、ジョイスティックの頂点を親指でおさえて操作するのが難しくなるでしょう。また、4つのボタンは高さを有しませんから、ボタンが親指に近い位置にあると、ボタンを押すのに親指をグッと折り曲げる必要があり、窮屈な感覚を覚えるユーザもいるでしょう。

 

つまり、ジョイスティックがコントローラの中央よりでユーザから見た時に手前側に配置され、ボタンがコントローラの外側よりで奥側に配置されているのは、親指での操作性を考慮した配置だと考えられます。

 

上でご説明したことは、メーカーから聴いた話でもなければ、何かの書籍や雑誌に書かれていた話でもありません。すべて私の推測です。妄想かもしれません。。。

 

ある発明について、請求項を記載しようとする場合、なぜ発明の効果が得られるのかを深堀りして考えていきます。発明の効果が得られる理由、メカニズムを把握することができれば、発明の効果が発現されるのに必要となる最小限の要素が明確となります。この要素を、言語化したものが、請求項です。

 

上のように、身の回りにある物の特徴について、なぜ、このような形状・構造をしているのか、なぜ、この位置に配置されているのか等を考えることは、発明の効果が得られる理由を、突き詰めて考える訓練になります。

 

発明ヒアリングの場で、発明者が、すべてを言語化できているわけではありません。発明者に代わって、それを言語化し、仮説として発明者に質問をぶつける。発明者から、その仮説の何が正しくて、何が誤っているかのフィードバックを受ける。フィードバックを受けて、新たな仮説を立てて、また質問をする。これを繰り返していくことで、発明への理解を深めていくことができます。

 

こうして、多くの情報を発明者から引き出すことで、明細書の内容も充実するでしょうし、意見書の説得力も増していくでしょう。

 

訓練に利用できるのは、PS4のコントローラだけではないですよ。ペットボトル、キーホルダー、ボールペン、地球儀、かばん、靴、本棚、椅子などなど、ありとあらゆる身の回り品にそれぞれ独自の工夫があります。これらを自由に利用して、発明ヒアリング、明細書作成、中間対応のスキルを磨いていくことができます。これは、やらない手はないのではないでしょうか。

 

 

田村 良介(弁理士、ライトハウス国際特許事務所)

専門分野:特許の権利化実務(主に、化学、ソフトウェア)

  note

ライトハウス国際特許事務所  https://www.lhpat.com/